第10章 チャンピオンカップ
ハッサムとオノノクスのバトルは想像よりも延びた。鋼の鋏と、鋭い頑丈な牙が当たるたびに、お互いを強く睨みつけ合っていた。
オノノクスが牙を振り回してハッサムに切りつけようとすると、ハッサムはその牙を鋏で挟み込み、動きを止めた。
「ハッサム、バレットパンチ!」
空いた片方の鋏をオノノクス目掛けてぶつけた。
「オノノクス、逆鱗だ!」
クワっとオノノクスは目を見開くと、待っていたと言わんばかりにハッサムに掴まれていた牙ごと大きく振った。逆鱗のパワーにハッサムは軽々と体を持っていかれ、あっという間に地面に叩きつけられた。
「ハッサム!!」
バリコオル、そして長引いているバトルにハッサムはヘトヘトだった。逆鱗で叩きつけられた体は痛み、ヨロヨロと体を起こした。
「逃げて!!!」
「!」
ハッサムが起き上がったことで、オノノクスは襲いかかってきた。の声でハッと意識を戻したハッサムは、右へ大きく飛び込んだ。
ドシン!、とオノノクスの踏み付けをなんとか避け、ハッサムは体を起き上がらせた。しかし、凶暴になったオノノクスがそれだけで止まることはなく、ハッサムを追いかけて襲いかかってきた。
自慢の鋭い大牙を振り回してくるオノノクスに、ハッサムは腕を前に構え、耐え忍んだ。隙のない攻撃に耐えていると、オノノクスは尻尾を大きく振り、ハッサムを横へ大きく飛ばした。
地面を転がり、片膝だけを立てたハッサムは息を大きく乱していた。まさに虫の息だ。
(どうして倒れないんだ…もう限界のはず)
すでにオノノクスの逆鱗でボロボロになっているハッサムに、ダンデは不思議に思った。もハッサムをボールに戻す素振りもない。
(ハッサム…もう動くのだってキツいはずなのに…)
はハッサムの様子に心を痛めたが、ハッサムから消えない闘志にグッとその想いを押し込めた。
「ハッサム、これが最後だよ」
は静かに言うと、ハッサムは震える足に力を入れて立ち上がった。まだ逆鱗で我を忘れているオノノクスは、立ち上がったハッサムを見ると、唸り声を上げながらハッサムに突進してきた。