第10章 チャンピオンカップ
(どうして毒の効かない技をわざわざ…でも、油断はできない!)
ダンデの読めない考えに、はワクワクした。全く効果がない技を繰り出しているオノノクスだが、ハッサムのバレットパンチに合わせて毒突きを打ってくるため、しっかりとした攻撃がオノノクスには入っていない。
「突き上げるんだ!」
「ギャォオオ!!」
ダンデの指示でオノノクスは、毒突きを大きく下からハッサムのバレットパンチを突き上げた。ハッサムの鋏は突き上げられ、一瞬胴に空きができた。
「アイアンテール!!」
その隙をダンデは見逃さず、そしてオノノクスもわかっていたのか、鋼の色に変化した尻尾をハッサムに叩きつけた。ガチン!と硬いもの同士が当たる音が響き、ハッサムは後ろへ飛ばされた。
「ハッサム!」
ザザザ、と地面に足を擦りながら後退したハッサムは、すぐに体勢を整えた。
「サイコカッター!」
空気を切り裂くように振りかぶった両鋏から、鋭い刃のようなものがオノノクスに切りかかった。
「牙で弾き返せ、オノノクス!」
オノノクスは自慢の牙でサイコカッターを弾くと、腕をクロスにさせてこちらへ飛んでくるハッサムを睨みつけた。
「シザークロス!」
サイコカッターに続いて、シザークロスも牙で受け止めたオノノクスは、後ろへ押された体に力を入れ直し、ハッサムを弾き返した。
(やっぱり強い…でも問題はオノノクスに相性のいい技がないこと…ドラゴンタイプの中でも複合がない分、シンプルで強い!それに…)
はハッサムに目を向けた。シザークロスで攻撃した方のハサミを見ると、そこには傷が出来ていた。
オノノクスの大牙は鉄骨をも切り裂く強度を持っている。ダンデが育てたとなれば、その牙の強度は野生のものより遥かに硬いだろうと予測できた。
(不利だ……だけど……勝ちたい!)
心臓がドキドキしていた。不利であればあるほど、どう倒そうかと、考えが止まらなかった。この状況をひっくり返してやりたいと、はニッとダンデに笑いかけた。
「これからですよ、ダンデさん!」
「!」
「ハッサム、バレットパンチ!」
勢いよく羽ばたいて行ったハッサムの後ろ姿を見て、はギュッと両手を握りしめた。
(勝たせてみせるよ、ハッサム!)