第10章 チャンピオンカップ
「クイックターンか…やっぱり技の構成変えてきてるな」
キバナは自身のあごに手を当てて、冷静にバトルを観ていた。
「--彼女のバトルスタイル、技の構成は動画で観れますからね…警戒するのは当たり前でしょう----それに、メタグロスが倒されたせいで雰囲気も変わったようですしね」
静かにバリコオルとハッサムのバトルから、ネズは視線をキバナに寄越した。それはすぐにバトルコートに戻ったが、キバナはネズが何が言いたいのかすぐにわかった。
「…あぁ」
バトルに真剣なを見ながら、キバナはスッと目を細めた。
「…あいつにとって俺たちのバトルってなんだったんだろうな」
「…」
どこからやるせない声色で言うキバナ。ネズは変わらず、視線はバトルに向いたままだったが、ネズもまた、キバナの言いたいことがわかっていた。
「----少なくとも俺は」
少しして、ネズが口を開いた。二人の視線は変わらなかったが、キバナにはハッキリ聞こえてた。
「本気じゃなかったとしても、バトルには真剣に向き合ってたと思います…あそこまで強くなるために、並の努力ではないことは、お前もわかってるはずです」
「…」
「…そんなにウジウジするくらいなら、お前からバトルを申し込めばいいじゃないですか、鬱陶しいのが余計鬱陶しいんですよ」
「!」
ハッと、キバナは何故今までそんなことが思い浮かばなかったのだろうと、勢いよくネズの方に顔を向けた。
「ネズ…お前天才か?さっきの暴言は無かったことにしといてやるぜ」
「うぜぇ」
暗い雰囲気だったキバナは、ネズの助言で一気に明るい雰囲気に戻った。
「この試合が終わったら、俺あいつに試合申し込むぜ」
「その前に謝罪じゃないですか?向こうはお前の顔も見たくもないかもしれないかもしれませんし」
「おまっ、そんなこと言うなよ!この俺さまの顔を見たくない奴なんて、世界中探してもいねぇよ!!」
うわぁ…、とネズは嫌そうな顔でキバナを見た。
「こんなナルシスト野郎のファンになる奴の気が知れねぇです…」
ため息を溢すと、ネズはまた試合に目を向けた。