第10章 チャンピオンカップ
「ダンデさん」
ダンデから放たれるチャンピオンとしての威圧感で、は一瞬にして全身に鳥肌が立った。もう何年も感じてこなかった感覚が、思い出されたように体が震えた。
「私はなんのために、どうしてトレーナーになったんだろうってずっと考えてた」
それでもまだ、心の奥までには遠く、うまく笑うことすらできない。
「初めてダンデさんとバトルをした時、ダンデさんが眩しく見えて…とても羨ましかった」
その姿に、いつかの自分を重ねて見ていたのかもしれない。
「叩き潰すなんて、初めて言われました----けど、」
自分を捉える黄金の瞳を見つめ返した。
「嫌いじゃないです。だって、私もへし折ってみたくなっちゃいました」
はベルトに付けてあるモンスターボールを一つとると、それをダンデの方へ向けた。
持っていたモンスターボールがカタカタと揺れだして、中に入っている相棒も期待しているように感じた。
ピリッとした空気を纏わせたに、ダンデは口角が自然と上がった。自分をへし折りたいと言ったこと、そして自分に期待しているのだとわかると、ダンデはますますバトルするのが楽しみになった。
それ以上二人は話すことはなく、背を向け合ってトレーナーが立つ位置へと向かった。いよいよバトルが始まるのだとわかると、スタジアムは観客の声で更に大きくなった。
は所定の位置に立つと、向かいに立つダンデもこちらを見つめていた。
(今日まで支えてくれたポケモンたちに応えたい…この旅が最高だったって思ってもらいたい…またみんなと楽しいバトルをしてみたい)
ふぅ、と一息吐くと、は目を閉じた。
そして目を開けて、モンスターボールを手に取った。ダンデもお決まりの勝利のリザードンポーズをとると、スタジアムは更に大きな歓声に包み込まれた。
「いくよ、みんな!」
腰につけたモンスターボール全部が揺れて、は手に持ったモンスターボールをフィールドに放った。