第10章 チャンピオンカップ
「とうとう始まったな」
観客席の特別席で、自身の膝に肘をつけて顔を支えたキバナが、フィールドで向かい合っているダンデとを見て呟いた。
「…お前は、どっちが勝つと思います?」
キバナの隣りには、のエレズンを膝の上に座らせたネズがいた。エレズンはフィールドに立っているに向かって手を振っていた。
「そりゃ、ダンデだろ」
「即答ですか…」
「そういうお前はどうなんだよ」
「…どちらも同じくらい強いと、俺は思いますけどね…」
「ハッキリしねぇな…なぁ、ネズ…やっぱりお前何か知ってるだろ。やたらアイツの肩持つもんな」
ネズはキバナを見ると、疑心の目を向けて見ていた。
「(めんどくせぇ上に誤魔化せそうになさそうですね…)知ってたとしてもいお前には言いませんよ」
「はっ…そうかよ」
不機嫌そうにキバナはネズから視線を離し、まだフィールドの真ん中で何かを話しているダンデとを見据えた。
「特に女を泣かせるような奴には言う気はありません」
「…」
悪かったなと、ジトっとネズを睨みつけると、ネズではなくエレズンと目が合った。エレズンもジトっとキバナを睨んでいて、ネズはすでに自分ではなく、フィールドの二人を観ていた。
「…言っとくが、今日謝るつもりだったぜ。アイツの部屋に行ったが、もういなかった」
「なら朝早くコイツを俺に預けてどこかへ行きましたよ」
「エレ」
はぁ、とキバナはため息をついた。
「完全に謝るタイミング逃したぜ…」
キバナは気まず気にを見た。特別席とはいえ、細かい顔の表情までは伺えず、昨晩自分を拒絶して泣いたを思い出すと、苦い気持ちになった。
「…なぁ、ネズ」
「なんです?」
「…今朝、アイツ…はどうだった?」
「…普通でしたよ、むしろ…」
「むしろ…?」
突然言葉を切ったネズは、今朝自分の部屋を訪ねてきたを思い出しながら、言葉の続きを話した。
「……このバトル、思った以上のものが見られる…かもしれないですよ」
キバナはネズの真剣な横顔を見ると、自身の顔もフィールドに向けた。
未だ向かい合ったダンデとを強く見据えて。