第9章 遠い存在
「私の願い…言ってもいいんですか…?」
「もちろんだ」
繋がれている手がギュッと握られた。
「…明日のバトルで、私を本気にさせてください…私を…打ち負かしてください…」
も繋がれた手に少し力を込めて握ると、ダンデは頷いて見せた。
「そういえば、俺の約束を君に言ってなかったな」
「え?」
「君ともう一度バトルするとき、俺は君がまた楽しいって思えるような最高のバトルをする。いや、してみせる!」
一段と強くなったダンデの輝きに、は眩しいなと思った。すると、また目から涙が溢れ出し、は慌てて手でそれを拭った。
「ご、ごめんなさい!もう今日涙腺が緩んじゃって!…う〜止まってよぉ」
「今日は謝ってばかりだな」
「ごめんなさ…」
「ほら、また」
「!!」
は口に手を覆いあてて、困ったようにダンデを見た。
「よし、君を送っていくがてら、気分転換をしよう!」
「気分、転換…?」
は首を傾げると、ダンデはリザードンを呼んだ。
「まさか…」
「さぁ、乗ってくれ!遠慮はいらない」
「バギュア!」
悠々とやってきたリザードンは、早く背中に乗れと言わんばかりに身をかがめてくれた。
「お、大人二人は流石に無理ですって!」
「俺のリザードンなら大丈夫だ!それに君は小さいからそんなに重くないだろ」
「カントーでは標準サイズの大人です!!!ガラルの人たちが大きいだけで、私はそんなに小さくうひゃあ?!」
少し気にしているところをダンデに言われ、ムキになって抗議していると、足の間から何かが割り込み、は悲鳴を上げた。咄嗟に、まだ繋いでいたダンデの手を力強く掴むと、離さないでずっと繋いでいてくれていた。
「でかした、リザードン!」
「バギュ!」
パッと手を離されて、ダンデは素早くリザードンに乗せられているの後ろへ乗り込んだ。
「ちょっと!!強引ですよ!!!」
「はは、すまない!行くぞ、リザードン!」
怒ったに気にすることなく、全く謝るつもりがない返答を返した。
「ちょっ///!!!」
「捕まって」
耳元でダンデに囁かれ、は泣きそうになりながら、リザードンの首元に手を当てた。