第9章 遠い存在
きっと俺が怒っていると思っているのか、は中々こっちを見てくれなかった。怒ってないと言ったら嘘だが、ここでを見捨てる事は俺にはできない。根気よく待つしかないと、繋いでいた手を強く握った。
「っ…」
そしてようやく、ゆっくりと俺を見てくれた。
「…君は俺との約束を守るために誰にも負けずに、今日まで勝ち続けてきてくれた。今日のトーナメントも、君は誰よりも強いと証明した。同時に誰かの夢を奪うことも君は知ってたはずだ。俺もチャンピオンであり続けるといことは、誰かの夢を奪ってるんだ。ここに立つと言うことは、その夢をかけたバトルでもある。あの日君は俺に約束してくれたが、君の本当の願いもあったはずだ」
「わたしの、願い…」
「君が試合を棄権しても、俺は怒らない。君が決めたことだ……だが、失望はするだろう」
俺は繋いでたとの手を解いて、立ち上がった。座っているを見下ろすと、また泣き出しそうな顔をしていて心が痛んだが、これは彼女自身が乗り越えなければいけない。
「立つんだ、。俺たちの約束のために、君の願いのために!」
離した手をもう一度に差し出した。
頼む、立ち上がってくれ。俺の手を取ってくれ。
そう願いながら、俺を見上げるに力強く笑いかけた。
・・・・・
力強い黄金の瞳を見ていると、触るとまるで焦げてしまいそうなほど、熱い太陽だなって思った。棄権したいって言えば怒ると思ったのに、私の全部を見透かしてたみたいに、手を差し伸べてくれた。
きっとこの手を今取らないと、私はこのまま泥沼に沈んでいくって思った。もう誰も傷付けたくないのに、グズな私はまだ心のどこかで、ここに立っていたかったのかもしれない。
誰かの夢を奪っている、そうダンデは言ったけど、誰かの夢でもある。ダンデを目標に、チャンピオンを目指している人も多くいる。
「立て」と、言われるのは嫌いなのに、なんでだろうな…ダンデに言われると、立ち上がれる気がするのは…。
私は迷わず、ダンデの取った。
するとダンデはフワリ、と笑って、私の手を力強く引き上げてくれた。