第9章 遠い存在
【ダンデ目線】
が無事キバナのジムで無事勝ったことを、仕事の最中に知った。と、言うことは、彼女はあとファイナルトーナメントを勝ち抜けば、俺のところへたどり着く。彼女は約束通り、誰にも負けずに勝ち進んでくれていることに、安心していた----のだと俺は思う。
その日の仕事を終えて、自宅へ戻った。彼女はキバナとはどう戦ったのだろうか、楽しみでリザードンに飛ばしてくれと頼んだほどだ。試合の動画は既に公式サイトにあげられていて、再生回数も既にすごい数になっていた。
試合の結果は、やはりの勝ちだった。ダブルバトルも上手いことに感心していたが、彼女のつけているグローブが目に入った。そのグローブは、初めて会った日にもつけられていた、ドラゴンタイプのもので、彼女がそれをつけて試合をしたことは今まで見たこともなかった。
試合が終わり、仲良さげに話しているとキバナの映っている姿に、俺は何故か居心地の悪い気分がした。
(この感じは覚えがある…いつだ?)
俺が思い出そうとしていると、画面に映っているとキバナの距離が近くなり、写真を一緒に撮っている姿が目に入った----瞬間、心臓のあたりがズキっと痛み出した。
痛みは治ることはなく、俺はロトムスマホに動画を閉じてほしいと言った。心配そうに俺の周りを飛ぶスマホロトムに「大丈夫だ」と言ったが、痛みが俺の心臓に張り付いたみたいにジワジワ痛かった。
しばらくすると、痛みはだいぶ引いた気がしたが、抜けない棘が刺さったような感覚があった。それ以外は特に何もなく、特に健康の異常もなかった。
それにトレーニングや仕事に集中していると、それは忘れられた。数日も経てば、ほとんど分からなくなった。チャンピオンカップも1ヶ月を切ると、俺は更にポケモンのトレーニングやコンディションを整えるために、そんなことに気を使っていられなかった。