第9章 遠い存在
(悩みって…私何かしちゃったのかな……き、嫌われてたらどうしよう…)
顔を青くしながら、はヤローに捕まったキバナを見た。
「本当にめんどくさい男」
「え?」
はぁ、とため息をついたルリナが、呆れた視線をキバナに送った。
「あなたに負けて悔しかったのよ、それも完膚なきまでにされて」
「お前の舐めプが原因だと俺は思いますけどね」
「その舐めプって言うのやめてくれませんか、ネズさん!」
怒った視線をネズに向けると、ネズは気にした様子もなかった。
「お前らなんとも思わねぇのかよ…コイツとバトルしたら、わかるだろ?」
おとなしくしていたキバナが再び口を開くと、みんなの視線が一気にキバナに向いた。
「キバナ君…」
「こいつが強ぇのは確かだ…だが、コイツが楽しそうにバトルするところ、見たことあんのかよ!」
「!」
「コイツをここの引きづり込んだのは俺さまだ…俺にはその責任がある」
その時、真剣な顔のキバナと目が合い、はドキリと心臓がなった。
「なのに俺さまじゃコイツを止めてやることもできない…本気にもさせられい俺自身にむかついてるんだよ!!!!」
「キバナ…お前…」
「みんなそうだろ、全力のコイツと戦いたいって思っているのは、俺さまだけじゃねぇ!!」
細められた緑色の目が、スッとを射抜き、は咄嗟にルリナを見たーーーが、彼女と目が合うことはなく、気まずそうに自分から目をそらしていた。
「ルリナ…?か、カブさん…?」
次にカブを見ても目が合うことはなく、メロン、オニオン、ヤローとも目が合わず、は冷や汗をかいた。
(みんな…本当は……みんな優しいから言わなかっただけで…本当は…)
『休んでいる暇はないですヨ、立ちなさい。求められれば応えるのがトレーナーの性、ここで立ち止まることは許しまセン』
脳裏に緑色の瞳がスッと細められたのが思い浮かび、目の前にいるキバナと目が合った。
「っ…!!」
「…?」
の異変に気が付いたのは、隣にいたネズだった。