第9章 遠い存在
「なぁにお前らそんなに仲良く話してるんだ?」
「「!?」」
語尾にハートがついてるんじゃないかと思わせるほど、ご機嫌そうなキバナがネズの背後からもたれかかりながら現れ、二人はビックリしてキバナを見た。
「キバナ様!?」
「重いですキバナ、さっさと退きやがれですよ!」
「そんな固いこと言うなよネズ〜」
ネズが嫌そうに後ろのキバナに言うと、キバナはますますネズにくっつき、はクワっと目を開けて二人を身納めた。
(福眼なのに目の毒すぎて辛い…!)
「お前も黙ってないでどうにかしろ」
「うわ〜ネズの兄貴、口が悪いですよ〜」
「…」
ますます眉間に皺を寄せたネズの顔を見たは、スンっと表情を整えた。悪ふざけも程々にしないといけない。
「あの〜、キバナ様…ネズさんちょっと困ってるので…」
「!」
「ふぁい!?(名前呼ばれた///!!)」
重しの如くネズにもたれかかっていたキバナが、に名前を呼ばれると、パッと顔をこっちに向け、急に名前を呼びだした。は姿勢を正しながら、キバナの次の言葉を待っていると、キバナは何故かニコニコとこっちを見ていた。
(え、めっちゃニコニコしてるんですけど可愛すぎかキバナ///)
名前を呼ばれて以降、話出さないキバナに、はぎこちなく広角を上げながらも、首を傾げて見せた。
「、逃げた方がいいですよ」
ネズがめんどくさそうにキバナを見ながら言った。
「こいつ、かなり酔ってやがる」
「え?」と、ネズの言ったことに首をかしげると、キバナの長い腕が片方、自分の方へ伸びてきた。それを目で追っていると、キバナの手は迷いなく、の頬に添えられた。
「ヒェ///…キバナさったたたたたた!!いはいっ!!!!?」
ドキドキしたのも束の間で、手を添えられた頬は今は無惨にも横へ引き伸ばされている。
「はは、よく伸びるじゃねぇか」
「いはいですキバナしゃま!!!(なに???何事?!?!なんで私のほっぺたキバナが引っ張ってるの?!)」
とにかく嬉しそうに頬を引っ張るキバナに、はただただ混乱したし、キバナの手を引き離そうにも、思いの外力が入って痛かった。