第9章 遠い存在
【キバナ目線】
あの後、はファイナルトーナメントが始まるまでの間、ワイルドエリアで修行に出てくると言って、俺さまはそれを見送った。手には俺さまの1番最初に作ったトレーナーカードを大事そうに持って、もう片方の手は大きく振って「行ってきます!」と、元気に言って飛び出していった。
他のチャレンジャーが来るまで、俺も負けっぱなしじゃいられないから、とにかくトレーニングあるのみだった。だが、今年は思いの外そこそこのチャレンジャーばかりだったのか、ついぞ一人も俺さまのところに辿り着かなかった。
おかげでトレーニングに集中できたのはよかったが、物足りなさも感じている。今年は豊作じゃなかった、それだけだ。
俺さまなりに、トレーニングは頑張ってきたつもりだった。
『さぁファイナルトーナメント決勝戦!!バトルもいよいよ大詰めでしょうか!今年大注目のチャレンジャー、選手!!全く手を緩めることがありません!!!キバナ選手、大ピンチ!!!!!』
キョダイマックスをしたジュラルドンを追い詰めてやがるのは、アイツのラグラージだ。俺はもうあとがねぇってのに、アイツはまだ4体目。まだ余裕で一体残している。
「はっ…俺さまを追い詰めたってのに、本当に笑わねぇよな…こんなに熱くなれるのはダンデだけだって思ってたけどよぉ、俺は楽しいぜ!なぁ、!!お前はどうなんだよ!」
「っ…ラグラージ、地震!」
本当に俺さまの前に立ってるやつはなのか?いつもいろんな表情を見せるアイツが、どうしてバトルの時だけ、あんなに苦しそうなんだ?何を考えている?何がお前をそこまで至らしめたんだ?
「負けるなジュラルドン!キョダイナックルで決めろ!!!」
あの時、俺が無理に推薦状を受けるよう勧めなかったら、そんな苦しい顔をさせなかったのかって今でも考えるんだ。
それでも、お前はここまで来た。今も苦しみながら。だったら……。
「ここでお前を止めてやらなきゃなぁって思ってたんだよ!!!ジュラルドン、ダイストリームだ!!!!」
このバトルが終わったら、話聞いてやるからよ……だから、止まってくれっ!!!