第9章 遠い存在
ラグラージの立っているフィールドの下は、ピシピシと地面が割れる音がしていたが、岩が突き上げてくることなく、静かに収まっていった。サダイジャに目を向けると、サダイジャはカチカチに氷漬けにされており、氷の中で目を回していた。
『サダイジャ、ジュラルドン、同時に戦闘不能!よってこの勝負、チャレンジャーのの勝ち!!』
ワーッと会場の歓声が一斉に大きくなった。砂嵐もいつの間にか収まっていて、キバナはガックリと頭を下に下ろしたが、すぐに頭の後ろに手を組んで、体勢をあげた。
「俺さま、負けても様になるよな。記念に自撮りをしておくか……」
どう見ても記念になるような顔はしていなかったが、キバナの後ろにフワフワ漂っていたスマホロトムが、苦笑いしながらキバナを見ていた。
(勝った…キバナ様に…)
はぁ〜、と大きな息を吐いて、はやっと緊張から解放されたような気がした。
「ありがとう、ラグラージ、ギャラドス」
自分の元へ来てくれた二匹に、は声をかけた。
「また助けられちゃったね…」
眉を下げたは、申し訳なさそうにラグラージを見ると、その大きな手をの頭に乗せてグシャグシャにかき混ぜられた。
「ラグ!ラァグ!!」
気にするな!と、言ってるのか、ハッサムなら大丈夫だ!と言ってくれたような気がした。
「ありがとう、しばらく無茶ばかりさせてごめんね」
「ラグ!」
胸を張ったラグラージは、得意げな顔をして笑って見せてくれた。二匹をボールに戻すと、キバナはすでにポケモンをボールに戻し、こっちに向かって歩いてきていることがわかった。
も慌てて駆けつけると、キバナは思ったよりも笑顔で、はホッと暗所の息をついた。
「激しい戦いを終えて……今は晴れ渡った空のように澄みやかな気持ちなんだよな----なんて言えるか!」
「ひぇ…(ですよね!キバナ様がそんなことおっしゃられる訳ないですよね!!あああでもあの笑顔からの怒り顔素敵です///!!!)」
「ダンデのライバル?チャンピオンでないのにオレとポケモンは自惚れていたようだ!」
怒っていると思ったら、そうでもなく、今度は不敵に笑い出したキバナにはドキンと心臓が高鳴った。