第9章 遠い存在
突然、ハッサムがドン!とラグラージを横へ押し飛ばした。横入りしてきたハッサムは、全く防御姿勢をとっておらず、ダイスチルがそのまま当たった。
「ハッサム!!!」
「ラグッ!!!」
とラグラージは声をあげて、ダイスチルに当たったハッサムに心配の声をあげる。ハッサムはフィールドのギリギリ端まで飛ばされた。フラつきながら立ち上がると、なんとでもないと、まだまだ戦う姿勢をとった----ビシ、と嫌な音が聞こえた。
それはどんどん増え、ハッサムの下から地面が盛り上がってきた。
「逃げてハッサム!!!」
は声をあげた時には遅く、大地から築き上げる大きな岩に、ハッサムは上へ突き飛ばされた。
「ハッサム!!!!」
ハッサムが地面に落ちるまで、それがスローモーションのように感じた。全く受け身を取るような気配もなく、地面に落ちていく姿に、は咄嗟に手で口を覆った。
「グッ!!」
が、ハッサムは地面に叩きつけられることはなかった。ハッサムに突き飛ばされたラグラージが、急いで駆けつけ、なんとかギリギリでスライディングしながらハッサムを受け止めた。
ハッサムは目を閉じており、ラグラージはハッサムがもう戦えないことを知ると、そっとフィールドに寝かした。
「ハッサム、戦闘不能!」
レフリーであるダンペイの声がスタジアム内に響くと、会場はあっという間に盛り上がった。は静かにハッサムをモンスターボールに戻すと、小さな声で「ありがとう」と言った。
(ダイマックス使ってやっと一匹かよ…あのハッサム、熱くなりやすいと思ってたが、よく周りを見てやがるぜ…さぁ、次は何を出してくる?)
キバナは次に繰り出されるポケモンにワクワクしていた。久々に感じる強い挑戦者に、それもダンデが認めているトレーナーだと思うと、余計に楽しいと感じた。
「来いよ!!ぶっ飛ばしてやるぜ!」
「油断してると、痛い目見ますよ、キバナ様!」
キッとは初めてキバナを睨んだ。やっと他の表情が現れ、キバナは口角をあげた。
はモンスターボールをフィールドに投げると、赤い竜のような鱗で覆われたギャラドスが現れた。