第9章 遠い存在

　バシャっと、まだ距離のあったラグラージから、飛ばしたマッドショットが、サダイジャの口に入り込んだ。

「はぁ？！そんなのありか？？！」

　キバナは驚いた様子で、口の中に泥が入ったサダイジャを見た。湿った土のせいで、燃えていた牙には炎が纏っていなかった。

「メロンさんの二の舞は食らわない！ハッサム！」

　グッと堪えていたハッサムは、に名前を呼ばれると、渾身の力でサダイジャにバレットパンチを打ち込んだ。

「対策済みだったってことかよ！ジュラルドン、ハッサムにアイアンヘッドだ！」

「ジュラ！！」

　想像よりもフットワークの軽いジュラルドンが、ハッサム目掛けて頭から突っ込んできた。

「ハッサム！！」

　は咄嗟にハッサムに声をかけた。ガキン！と、鋼と鋼がぶつかり合う音が響いた。ハッサムは咄嗟に開いていた手を顔の前に持ってきたことで、ジュラルドンのアイアンヘッドを顔に当てずに済んだ。
　しかし威力があったため、ハッサムは横へ吹き飛ばされた。

「大丈夫か、サダイジャ？」

　飛ばされたサダイジャに心配の声をかけると、サダイジャはすぐに身を起こし、「ジャ！」と鳴いてまだまだ戦える意思を示した。

　ハッサムは身を起こすと、ジュラルドンを強く睨みつけた。両のハサミを構えると、ガチン、ガチンと音を鳴らした。
　それに気が付いたジュラルドンもハッサムを睨み、お互いに絶対に負けないという意思を感じた。

「－－－－お前のハッサム、思ったより熱くなりやすいようだな」

　不敵に笑ったキバナが、怒りを感じているハッサムを見て言った。

「お前もこれくらい、熱くなったほうがいいんじゃねぇか？」

「……」

（こんくらいの挑発じゃ、動じねぇか－－－そんくらい集中してるってことか）

　ハッサムはチラリとを見ると、はうなずいて見せた。

「ハッサム、ジュラルドンにバレッドパンチ！」

「メタルクローで反撃しろ！ジュラルドン！」

　睨み合った両者が拳を打ちつけ合うと、フィールドには鋼がぶつかり合う鈍い音が響き渡った。

「サダイジャにマッドショット！」

「サダイジャ、まもる！」

　バシュっと、まもるで弾かれたマッドショット。