第9章 遠い存在
「嘘でしょ…キバナさんのポケモンを2体同時に…」
「相性もあるにしても、ここまで計算してたのか…?」
スタジアムの歓声の中に、少しどよめきの声も混じっていた。キバナは二匹をモンスターボールに戻すと、次のモンスターボール二つを掴んだ。
(しっかりしろ、キバナ!まだ始まったばかりだ!次でアイツのポケモンを交代させればいい!!)
ギュッと片手に収まる2個のモンスターボールを握った。向かい合っているを見ると、いつも自分を恥ずかしそうに見てる彼女の姿はなかった。ただ静かに、己の次のポケモンが繰り出されるのを待っているようだった。
(いつまでもその澄まし顔できると思うなよ)
キバナは持っていたモンスターボール二つをフィールドに投げ入れた。次に繰り出されたのは、体のほとんどを自分の体でなのか、砂で覆っているのかわからないが、蛇のようなサダイジャと、美しい白に近い鋼のボディを持つジュラルドンだった。
(ジュラルドン…鋼とドラゴンの複合のせいで、氷も効きづらい上に、フェアリータイプの技も受け付けない…弱点は格闘か地面。なら弱点が多いサダイジャから倒す!)
絶対に勝つ----はギュッと拳を握りしめた。
「行くよ!ハッサム、サダイジャにバレットパンチ!ラグラージはマッドショットで援護!」
二匹は指示を受けると、サダイジャに向かって走り出した。
「サダイジャ、大地の力!ジュラルドン、ストーンエッジ!」
キバナもがまずサダイジャを狙ってくると予想して、向かってくる二匹を睨みつけた。
二匹の走っている地面から、岩が突き上げ、ハッサムとラグラージは左右に別れた。それでもサダイジャ最初に近付いたのはハッサムで、大きく振り上げた鋼の拳をサダイジャに振り下ろそうとした。
「炎の牙だ!」
サダイジャは大きく口を開けると、生えて牙に炎を纏わせた。すると、拳を振ろうとしたハッサムはぴたりと動きを急に止めた。サダイジャは動かなくなったハッサムに噛みつこうと飛びついた。
「ラグラージ!」