第9章 遠い存在
「さん、わかります!!!」
「何してもかっこいいですよね、キバナさん!!!」
「やっぱりさんってキバナさんのファンですよね!あの眼差しを見てもそう言えるなんて…なんでキバナさんのファンになったんですか?!きっかけは?!」
三人は注意されたばかりだというのに、の発言に同意し、さらに気になっていた質問をぶつけた。「えーっと…」と、は三人を困ったように見たが、三人の目はワクワクしていて、とても断れない雰囲気を出していた。
「ファンになったきっかけは…ダンデさんに負けても、諦めないところ…です。負けっぱなしですけど、絶対に勝つって頑張ってるところが本当にかっこいいなって…そのためにいっぱい努力してるんだろうなって…キバナ様の逃げない姿勢は、私の憧れなんです」
は思い出すように、キバナのことを語った。
「それに、キバナ様ってすごく優しいって私、知ってるんです」
(さん、そんなにキバナさんのこと…)
(キバナさん、ここにあなたの理解者がいます!)
「ならさん、尚更あれをはくべきです!!」
「え、あれってなんですか…?」
突然リョウタが力強く言い出し、はキョトンと首を傾げた。
「あれね、リョウタ」
「あれしかないわ、さん」
レナとヒトミもスッと真顔になり、は背筋がゾッとして一歩後ずさった。しかし、それに気が付いたレナがガシッとの両肩を掴んだ。
「ダメですよ、さん、あれを今はかないで、いつはくって言うんですか!」
「え?」
「さ、ナックルジムに行きましょう!」
「ええ?!」
「エレズンは俺が連れて行きます!」
「いやあの私」
三人を止める前に、レナとヒトミに両手をとられたと、リョウタに抱えられたエレズンは、ナックルジムに向かって走り出した。ナックルジムに着くと、スタジアムに直行ではなく、更衣室へ連れて行かれた。リョウタとエレズンは外で待っていると、少し遅れて出てきた女子三人を見た。
「やっぱり持ってたんですね、さん」
の右手にはめられた紺色の手袋を、リョウタは嬉しそうに見た。