第9章 遠い存在
「ジャランゴ、ユキノオー、戦闘不能!よってこの勝負、チャレンジャーの勝ち!」
レフリーの声が宝物子に響き、は出していたハッサムとゲンガーをボールに戻した。
3勝負はあっという間だった。
それもはハッサムとゲンガーしか出していない。交代させることもせず、キバナのジムトレーナーはあっという間に敗れた。
(おい…おいおいおい、コイツが強いってわかってたけどよ、実際目にすると変わるなんてもんじゃねぇ…)
キバナは湧き上がる高揚感に、体が震えた。自分が育てたジムトレーナーたちがこうもあっさりやられてしまい、悔しい気持ちもあったが、力の差を見せたを、ねじ伏せたい気持ちが沸々と湧いてきた。
(今ならわかるぜ、ダンデ。なんでお前がコイツとバトルしたいのかをな…お前の忠告、ありがたくもらっといてやるぜ)
バトルフィールドでハッサムとゲンガーに微笑んでいるを、キバナは静かに見つめた。さっきまでバトルをしていた雰囲気は消え、怪我をしていないかチェックしていた。
(ダブルは久々ね……その割には手慣れたバトルをしてた。あの二匹も慣れた様子だった…二匹しか出さなかったのは、あいつらしか慣れてる奴らがいなかったからか?いや、そんなはずはない。今までのバトルからして、コイツは最低限のポケモンしか出してこなかった…出すに及ばないってことか?)
はジッと自分を見ている視線に心臓をバクバクさせていた。
(き、キバナ様…なんかめちゃくちゃこっち見てるんだけど…///!)
まさか解析させているとも知らず、キバナに見つめられてぎこちない動きしかできないはどうしていいかわからず、すでに怪我のチェックをしていたハッサムの二度目のチェックをしていた。
(や、やっぱり叩かれた事を根に持たれて…いやいやいや、キバナ様はそこまで心の狭い男じゃないし!で、でも見返せない!)
うっすらを頬に赤みが差し出し、は「ううう」と困った声を漏らしていた。