第9章 遠い存在
「ご、ゴメンナサイ、キバナさん…」
エレズンを抱き上げながらキバナに頭を下げた。
「全然痛くなかったから大丈夫だぜ?な、バトルしにきたんだろ?」
「そうですけどぉ…(キバナ様のおっ…じゃななくて胸に触れてむしろご褒美というか、嬉しいというか、こんな邪な事考えてて本当にすいませんキバナ様…)」
は必死ににやけそうになる口を見られるまいと、頭を下げていたのだった。
「映像とは全然違うね、あの人」
「ああ、雰囲気が違う」
「早く戦ってみたいですね!」
レナ、リョウタ、ヒトミは、声を潜めながら二人の様子を見ていた。
「はっ…なんか視線が刺さります!」
じっと見られていたせいか、はビクッと体を震わせて、やっと顔を上げた。キバナは「そりゃ、待ってたからな」と、意味深げに言った。少し離れたところにいるジムトレーナーの三人を見ると、キバナはニッと笑って見せた。
「俺さまが直属に育てたトレーナーたちだ、ずっとお前と戦いたいってよく言ってたぜ」
「え!」
「もうミッションは始まってる、ここのミッションは簡単だ。今からあの三人と戦ってもらう。それもダブルバトルだ、何ならリタイアしてもいいんでぜ?」
「ダブルですか…もう随分やってないですけど、リタイアはしません…約束の物がかかってるので!」
「お、おう…(…こいつのバトルの原動力ってなんだ…マジで俺さまのカード狙いでここまで来たのかよ……)準備はいいか?」
キバナはに尋ねた。ふぅ、と一息吐くと、は「はい」と答えた。
「エレズンはここで見ててね」
エレズンを宝物庫内の壁際に下ろすと、エレズンはもうわかっているのか、コクンとうなずいて見せた。指定の場所に立つと、向かいにはもうジムトレーナーが立っていた。
キバナも壁際にもたれて試合が始まるのを待った。
(見せてもらうぜ、お前の戦い方、ポケモン…)
そして目を細めてを見たキバナは、注意深く観察した。