第9章 遠い存在
「お〜い、いつまでそこで突っ立って…いてっ」
拳が扉に当たる瞬間、突然扉が内側に開き、の拳は扉に当たることなく、振り下げた拳は思ったより弾力のあるものに当たった。少し呆れたような声が、扉の中から出てきたと同時に、の拳はその中から出てきた人の胸に当たってしまった。
「お、なんだ、開けようとしてたのか?」
「…」
「おーい」
「…」
中か出てきた長身の男は、扉の前で固まってしまっているの顔の前に手を振った。しかし、の目は、自分の拳がまだ当ててしまった人物の胸元を凝視していた。
(私の拳が…当たってる…む、胸元に…硬かったけど木とかの感触じゃない…ちゃんと柔らかさがあって……)
「おーい、ー?」
はやっと顔を上げた。当ててしまった手を下げると、その場に静かに正座した。エレズンを隣に置くと、姿勢をさらに正した。
「あー、?どうし…」
「すいませんでしたぁあああキバナさんんんん!!!!!」
は勢いよく頭を下げると、大きな声で謝罪を述べた。キバナはビクッと体を震わせ、見開いた目で地面に頭をつけているを見ていた。
(ど、どうしたんだこいつ?!?!え?これが噂のカントーの奴らがやるっているドゲザってやつか!?)
「キバナさん、何外で騒いでって…わああああああ何やらせてるですかキバナさん!!!!」
奥からジムトレーナーの一人、ショータが様子を伺いに来ると、土下座をしているが見えて、慌ててキバナを見た。
「ち、ちがっ!これはこいつが勝手に」
「許してくださいいいいいいい!!!!」
「お、俺の知らないところでキバナさんが女の子にこんなことを…」
「おい!違う!させてねーから!!って、お前もいつまで頭下げてんだっっ!!!!」
いつも自分を尊敬の眼差しで見ていたショータが、顔を青くしてキバナを見ると、キバナはこれ以上誤解を招かないためにも、土下座をしていると、その隣での真似をしているエレズンの首根っこ掴むと、慌てて宝物庫に引き込んだ。