第9章 遠い存在
ネズとマリィに別れを告げて、は自転車のカゴにエレズンを入れて、ルートナイントンネルの中を潜った。ここを抜けて7番道路に出る、すると大きな古城が目に入ってきた。
「…ナックルシティ」
はギュッと自転車のサドルを握り込むと、7番道路とナックルシティを繋ぐ橋を渡った。どんどん大きくなっていく古城に比例して、はドキドキと緊張してくるのがわかった。
(やっとキバナ様と戦うのか…ちょっと複雑だけど…勝たないとチャンピオン戦の挑戦権が取れない…それに)
『なぁ、本当に出る気はねぇのか?』
(それにショタキバナ様のレアリーグカードがかかってるんだもん!勝って家宝にしたい!!!)
「エレズン、あともう一つだよ!私、頑張るからね!」
「エレ!」
ふんす、と気合いの入っているエレズンを見て、はニッコリ笑った。自然と自転車を漕ぐペダルにも力が入り、とエレズンはナックルシティに予定よりも早く着いたのだった。
・・・・・
「うーん…こっちの方がいいかな?」
は両手に持っているハンガーにかかった服を見比べて、姿見に合わせて悩んでいた。ここはナックルシティにあるブティックの一つ。かれこれ30分以上はこのお店にいる。
「エレ…」
エレズンはつまらなそうに用意されたブティックの小さなソファに座って待っていた。一体何に悩んでいるのか、エレズンには全く理解できなかった。
「えっと…毛先の傷んだ髪を切ってもらいたくて…」
ようやく服が決まったと思ったら、次は美容院だった。そこでも用意されていたポケモン用のソファに下ろされて、エレズンはブスッと拗ね顔でを見ていた。
戻ってきたはどこか嬉しそうだったが、髪が少し短くなっただけで、そういつもと変わらない。
「お待たせ、エレズン!待っててくれてありがと〜!」
「…エレ」
「退屈だったよね?ケーキ食べに行こう、ね?機嫌直して?」
幼いエレズンは、がケーキと言ったことで少し機嫌を直したが、どうして己の主人がこんな退屈な時間作ったのか、後日わかるのだった。