第9章 遠い存在
「へっっっぷしっ!!!」
更に一週間後。
スパイクタウンのポケモンセンター前、は口元を押さえてクシャミを防いだ。
「でっかいクシャミですね、マリィに移さないでくださいよ」
「も〜言わないでくださいよネズさん!これでも押さえた方ですよ!」
はムスッと拗ねた視線でネズを見た。ネズは「そうですか」と、サラッと遇らうが、はすぐに視線をネズの後ろに隠れている女の子に戻した。
「さん、本当に行くっと…?」
チラッとこちらを眺めてくる緑色の瞳に、はギュンっと心臓が縮んだ気がした。
「はぁ〜〜〜〜〜マリィちゃん本っっっ当可愛い!行きたくなくなっちゃう」
「マリィが可愛いのは当たり前です、さっさと行ってください」
どこか冷たいネズをは完全に無視して、締まりのない顔でマリィと視線をわせるためにはエレズンを抱えながら少し屈んだ。マリィと言われる女の子は、ネズの妹であり、あのネズとのバトルを実はこっそり隠れてみていたことがバトル後にわかった。
最初は自分の兄を負かした挑戦者にいい顔はされなかったが、マリィがあわまりにも可愛かったので、は毎日ネズの家へ遊びに行っていた。
次第にへの警戒が薄れ、ネズのいない間にポケモン勝負をちょこっとしたり、ポケモンの生体や特徴を話したりしていくと、マリィの警戒は次第に薄れ、今では旅に出るを「行かないで」と訴えかけてくる目を向けられていた。
「---うん、行かなきゃいけないんだ…」
「ダンデに勝つと?」
「うん、勝つよ!次バトルするまで、誰にも負けないって約束してるんだ」
「…」
ネズは目を細めてを見た。
「さんはチャンピオンになりたか?」
マリィのキラキラした瞳がを写した。どことなくネズからの視線を上の方から感じながらも、は苦笑いをマリィに返した。
「うーーーん…チャンピオンはいいかな、なんか堅苦しそうだし、私には合ってないっていうか…」
眩しく感じるマリィの視線から逃れるようには地面に視線を向けた。
「この旅が終わったら、帰ろうと思ってるの」