第8章 ジム巡り②
「火炎放射でもっと氷を溶かして!」
リザードンが炎を吐き、そして翼で仰ぐと視界はどんどん悪くなった。おかげでフィールドに会った氷はほぼ溶けてしまった。
(まったく…霧払いなんて覚えてねぇですよ)
ネズはが強いとわかっていたがまさかこんな周りくどい戦い方をしてくるとは思ってもいなかった。霧のせいで一番遠くにいるの姿さえ認識できないうえ、タチフサグマの覚えている技ではこの霧を攻略することは不可能だった。
すると、バチバチする音がフィールドから聞こえてきた。
(一体どこから…)
ネズは目を閉じた。微かな音すらも聞き逃すまいと集中した。
「(…タチフサグマの息遣い…バサバサするこの音は、リザードンの、翼…音のくる方は…)タチフサグマ!そのままブロッキング!」
ネズが指示を飛ばしてすぐ、タチフサグマの目の前にリザードンが霧の中を飛びながら姿を表した。右手には青白く光る雷を纏った拳がタチフサグマ目掛けて突いた----ビュン、とリザードンはタチフサグマを突かず、真横を通り抜けた。
「通り抜けた?!タチフサグマ、後ろだっ!!!」
「火炎放射!」
タチフサグマの背後をとったリザードンは、手に纏った雷パンチを解くと、口いっぱいに炎をタチフサグマの後ろから吐き出した。
「ギャウ!!!」
「タチフサグマ!!!」
炎に包まれたタチフサグマは、ゴロゴロと地面を転がって火を消そうとしていた。炎を消えると、毛が燃えた焦げ臭い匂いがふわりと香った。
「タチフサグマ!立ち上がるんだっ!!カウン----」
「カウンター」とネズがいい決まる前に、青白い光が素早くタチフサグマに飛んでいった。
(なんだ…この圧倒的な差は…)
聴き慣れたキーーーンとする耳鳴りが聞こえるような、リザードンの手に纏った雷が、スローモンションのようにタチフサグマの顔に入り、バチバチとする音が嫌に大きく聞こえた。
リザードンの雷パンチがタチフサグマに入ると、飛んでいた勢いで大きく後ろへ吹き飛ばされた。その先は観客側のフェンスで、氷の壁がまだ残っていた。
吹き飛ばされたタチフサグマが壁にぶつかり、氷は大きな罅があちこちに広がった。壁にぶつかったタチフサグマはバタリ、とフィールドに倒れ込んだ。
「--た、タチフサグマ…戦闘不能だぁぁああ!!!!」