第8章 ジム巡り②
スゥッとスカタンクが息を大きく吸い込むと同時に、スカタンクの顔を目の前にリザードンの顔が大きく見えた。
「!!」
「ドラゴンクロー!」
早いっ!と、ネズがそう思った時には、リザードンとスカタンクにあった距離が一瞬で詰められて無くなっていた。リザードンの尖った爪がスカタンクの胸元を切り裂き、スカタンクは目を閉じていた。
リザードンはドラゴンクローに使った右手を振り切ると、流れるように体を左に回した。勢いのついた体をグルッと回していくと、体の最後についている炎の灯った尻尾が、スカタンクの切り裂いた場所に同じく叩きつけられた。
スカタンクは勢いよく後ろへ吹き飛ばされ、ネズの横を通り過ぎた。バンっ!と、大きな音が後ろから響き、ネズは慌てて振り返った。
「ぶ…ぶぎゅぅ…」
「スカタンク!」
ネズはマイクを捨てて慌ててスカタンクに駆け寄った。スカタンクは目をグルグルと回していて、どう見ても戦闘不能だった。
(…早い上に俺のスカタンクが一撃…疲労が溜まっているとしてもこんな…!それにさっきの動きは……)
はぁ、とネズはため息をついてスカタンクをボールに戻した。レフリーに首を振って見せると、レフリーは顔を青ざめさせた。
「そ…そんな……す、スカタンク、戦闘不能!」
フレリーがマイクに向かって言うと、全く状況が見えない観客は不満の声を上げた。のポケモンが何かわからず、ただスカンクが戦闘不能になったことで、動揺が走っていた。
ネズもゆっくり自分の元いた場所に戻ると、静かにフィールドの上にいるリザードンを見た。
(こんなポケモンをまだ隠し持っていたなんて…いや、このリザードンは他の手持ちとは格段に違う…あの時のダンデと比べ物にならない、と考えた方がいい…)
ギュッと、ネズは次のモンスターボールを握りしめて、フィールドへ放り投げた。中から出てきたのは、腕を胸の前でクロスさせ、白と黒、そして灰色の毛並みを持った、タチフサグマが出てきた。
「最後のメンバー紹介!甲高い唸り声が自慢のタチフサグマ!」
ネズは右手の人差し指をタチフサグマを指して、マイクに向かって叫んだ。