第8章 ジム巡り②
砕けた氷の破片が空気中に舞い、ライトに当たってキラキラと輝いていた。
「グゥ…っ!」
冷凍ビームを出し続けていたラグラージが急に止まり、ゼェゼェと苦しそうに息を吐きながら地面に顔をふせた。ついにスカタンクのどくどくがラグラージの体力を0へと誘おうとしていた。口の周りについた霜も痛々しく見える。
「戻って、ラグラージ」
は瀕死に近いラグラージをモンスターボールに戻した。
「…お疲れ様、ごめんね…苦しかったよね」
は手にあるモンスターボールを両手で包むと、胸元に引き寄せてギュッと握った。
「ついに!ついにスカタンクのどくどくがラグラージを追い詰めたぁっ!!戦闘不能でしょう!!今年大注目のチャレンジャー、のポケモンを!ネズさんが倒したぞ!!!」
すっかり興奮しきったレフリーの放送に、氷の壁の向こうにいる観客はワッと声を上げて喜んだ。
「1対2だ!さすがネズさん!!!」
「ネズさーん!全然見えないけど応援してるわ!!!」
「ネ・ズ!ネ・ズ!」
観客が何を言っているかはっきりわからなかったが、ネズにはなんとなく自分のファンが喜んで声を上げてくれているとわかった。
「よく頑張りました、スカタンク」
「プゥ!」
「…が、油断は禁物。手遅れじゃないといいんですがね」
フィールドには粉々に砕けた氷があちこちに転がっていた。熱中していて気がつかなかったが、すでに空気が冷たく、自分やスカタンクの吐く息が白く見えた。
「ここはメロンさんのジムじゃないっていうのに…(次のポケモンは…ハッサムか、毒の効かないメタグロスかゲンガー、それとも電気タイプのシビルドン…どれも厄介なポケモンばかりですね)」
はぁ、とネズは大きく息を吐いた。しかし、目はしっかりとを見据えていた。
はラグラージのモンスターボールを腰のベルトに付け直すと、カタカタ揺れているモンスターボールを手に取った。
「…本当はダンデさんの所までって思ってたんだけど…野生ばっかりじゃ飽きちゃったよね」
困った様に手の中のモンスターボールを見ては呟いた。