第3章 迷走
ローズタワーでの一件から三日がたった。
もうとっくに朝の9時を過ぎているのに、私はベットの上でずっとゴロゴロしていた。部屋の隅にあるテーブルに置かれた紙の存在を思い出すと、ムズムズするような、モヤッとするような、よくわからない気持ちでいっぱいだった。
『俺は君と勝負がしたい』
力強い目をしたダンデにそう言われて、息が詰まりそうだった。
本当に私とバトルをしたいって言う気持ちが伝わってきて、揺れてしまった。彼とバトルをすれば、また心から楽しい気持ちでバトルができるかもしれない。
でもそうでなければ?
またあの時みたいにわからなくなるのが怖かった。
戦って、
(勝たなければ)
戦って、
(勝たなければ)
戦って、
(勝たなければ意味がない)
だんだん自分が何をしているのかわからなくなった。
そして気が付いたら私はポケモンバトルが楽しいと感じなくなっていた。あんなに大好きだったバトルが、楽しかったのに、私は…。
「バキュア」
「……リザードン」
「バギュ」
私の様子に見かねて、モンスターボールから出てきたリザードンは、顔だけベットに乗せてジッと私を見ていた。どんな時だって私の1番の親友。ずっと一緒に旅をしてきた相棒。
「…うん、ごめんね。心配かけて…ごめん」
「バキュ、バギュア」
「…外の空気吸ってこいって?」
「バギュ」
チラリと窓の外を見れば、今日は生憎の雨だった。
「今日雨だしなー出たくないなー」
「グルルルル」
「えええそんな怒んなくてもいいじゃん…」
私は寝転がったまま両手をリザードンの顔に伸ばして、ギュッと抱きしめた。あったかくて、泣きそうになった。
「うん、行ってくるよ。美味しいポケモンフーズ探してくる」
「バギュア!」
リザードンが嬉しそうに鳴いて、ベロリと私の顔をひと舐めした。
さて、言われた通り、外の空気を吸いがてら約束のご飯を探しに行くとしよう。