第6章 ジム巡り
「(なんてタフネスなんだ…火傷を食らってもう随分経つのにまだ倒れないでいる!)頑張るんだウインディ!あともう少しだ!!」
カブはギュッと自分の膝の上に当てていた手に力を入れてウインディを応援した。それに応える様に、ウインディは噛みつく力を込めた。
二匹の攻防は静かに、だがお互い絶対に一歩も引かないという思いが伝わり、観客は大声で自分の応援しているポケモンの名前を叫んでいた。
「(このままじゃ消耗戦でドラピオンが…ここは一か八か!)ドラピオン!ツボをつく!」
ドラピオンは余っていた尻尾を自分の背中に突き刺した。
すると、ウインディを締め付けていた腕の力が上がり、ウインディから苦しげな声が聞こえ始めた。
(やった!運よく攻撃力が上がった!!)
ギリギリとドラピオンの締め付ける攻撃は強くなり、もう二匹の限界はすぐそこだととカブは思った。
毒が先にまわるか、火傷が先に蝕んでいくのか、二人は手汗握る思いで自分のポケモンを見守った。
___そして、先に力抜いたのはドラピオンだった。
腕の力がなくなり、抱きしめていたウインディを解放した。
(ドラピオン…!)
はギュッと口を真一文字に結び、ドラピオンのモンスターボールに手をかけた。
ドサリ、とフィールドに倒れる音がした。
それはのポケモンではなく、ウインディが倒れ込んでおり、ドラピオンはまだ立ち上がったままだった。
急いでレフリーが様子を見に二匹の元へ走ると、持っていた旗を上に掲げた。
『ウインディ戦闘不能!』
ワッと一斉にスタジアム内が観客の声で埋まった。
カブは静かにウインディをボールへ戻すと、「よく頑張ってくれたね」と労いの言葉をかけた。
もモンスターボールをドラピオンに向けると、ドラピオンは後ろに振り返った。は一度頷くと、ドラピオンは力が抜けた様に倒れそうになった。その前にボールに戻し、滲み出そうな涙を押さえ、は次のモンスターボールに手をかけた。
(ありがとうドラピオン…ここまで引っ張ってきてくれて…)
はカブを見た。
カブは目を閉じ、集中している様だった。