第6章 ジム巡り
【ローズ視点】
今年もチャンピオンカップに向けて、チャレンジャー達のジム巡りが始まり、わたくしの会社はいつもより忙しい様子が窺える。特にオリーヴ君はわたくしの秘書を兼任しながら、わたくしの手の回らないところまでしっかりやってくださる。わたくしは本当に優秀な彼女には感謝してもしきれない。
そしてもう一人、このガラルの象徴とも言える存在のダンデ君。
「おはようございます、ローズ委員長」
「ああ、おはようダンデ君」
休みの少ない私と同様、彼とはほぼ毎日仕事場で会う。いつもなら仕事の打ち合わせや、確認の話をして、次の日まで会わないというのはザラなこと。
(おや?)
でも今日はどこか雰囲気が違うダンデ君に、わたくしは心当たりがあり、つい彼に聞いてしまった。
「今日はご機嫌なようですね、何かありましたか?」
「え・・・そうですか?」
わたくしに指摘されて、ダンデ君は首を傾げた。
「いつも通りだと思うんですけど」
「いや、すまないね。なんとなくそんな気がしただけでね。てっきり君のジム巡りが順調で嬉しいのかと思いまして」
大人気ない話なのですが、わたくしは君の名前をわざとだして、彼の様子を見たくなったのです。
するとダンデ君は面白いくらい反応するので、わたくしはやっぱり君のことだとわかりました。ダンデ君は少しソワソワしたような様子で、わたくしに話してくれました。
「実は昨日彼女と電話で話したんですが」
「うん(ちゃんと使ってくれているようでよかったです)」
「楽しいって、言ってくれて・・・」
「うん(だから機嫌が良かったのですね)」
「少しずつですが、彼女が打ち解けてくれている気がします」
「それはいいことですね」
「はい、俺たち友達になったので」
「そうですか・・・え、友達?」
わたくしとしたことが、耳を疑ってしまいました。しかしダンデ君を見ると、彼は嬉しそうにしているので、今はこれででいいのかなと思うことにしました。先は長いようですが、私はあくまで見守ると決めてますので。
「くれぐれも足を掬われないようにね、チャンピオン」
「もちろんです。俺は誰が相手でも容赦しません」
「今年も期待してますよ」
「任せてください」
そう言ってくれたダンデ君の目は力強く、わたくしも頷いてみせた。