第6章 ジム巡り
シン、と静まり返ったスタジアムで声を上げたのはだった。
シビルドンはの声を聞くと、名残惜しそうに口に入れたサシカマスを出し、そっと濡れたフィールドにおいた。
サシカマスもさっきの恐怖で気を失い、戦える状況ではなかった。
『サシカマス、戦闘不能!』
レフリーの声が響き、ルリナはハッとして、サシカマスをモンスターボールへ戻した。に視線を向けると、はシビルドンを呼び寄せ、何か話をしているのが見えた。
(今のは・・・なんだったの?指示なく私のサシカマスにとどめをさそうとしてた・・・それに渦潮を放った後、わたしのサシカマスが急に痺れ出した。放電は渦潮と相殺されたはずなのに・・・)
ルリナは注意深くフィールドを見た。
(シビルドンが渦潮を避けていた間、特に変わったことはなかったはず・・・何が・・・)
ルリナが考え込んでいる間、はシビルドンを自分の手元に呼び、シビルドンのの両手を自分の両手で優しく掴み、話しかけた。
「シビルドン、もうあんなことしなくていいの」
「シビ・・・」
「・・・ごめんね、私が・・・前に言ったことなのに・・・でも、もうこれからはしなくていい。一緒にもっと強くなろう」
すっかり落ち込んでしまったシビルドンだったが、が一緒に強くなろうと言うと、落ち込んでいた顔をあげて、またピョコピョコとその場で跳ね出した。
「あともう一匹、大丈夫?」
「シビビ!」
「これが終わったら、シビルドンの一番好きなポフィン作ってあげるね!」
「シビー!!!」
ポフィンという言葉に反応して、シビルドンは元気よくフィールドの真ん中に戻っていった。
「・・・」
は先ほどの、シビルドンがサシカマスにとどめをさす瞬間を見たとき、心臓が凍りついた。あと1秒指示を出さなければ、シビルドンは確実に噛みつき、牙から電気を流していた。
(サシカマスがシビルドンを怖がってくれて気絶してくれてよかったけど・・・うっかりしてた・・・私はもう、あの頃に戻りたくない)
冷たくなった手をギュッと握り、ちょうどフィールドに戻ったシビルドンの意識を集中させた。思い出したくない記憶が意識を支配してしまう前に。