第6章 ジム巡り
「今日開会式に来てた一人に、強いやついるから気をつけろよ」
キバナはロトムスマホに例の動画を出す様に言うと、ロトムはキバナのポケットから飛び出し、彼が求めている動画をスクリーンに写して見せた。
動画に写っているのは、ハッサムと女性が、相手のフォックスライを一撃で仕留めているところだった。
「・・・この動画って、少し前にニュースでしてなかった?」
「ああ、してたぜ。引ったくりのやつが取ったものがマクロコスモ社のものだからな。そのお詫びか、ローズさんがこいつに推薦状渡したんだけど、それだけじゃねぇんだ」
動画を見たルリナは、キバナに問いかけると、すぐにキバナは答えた。
そして話を一度区切り、スクリーンに写っている動画を見て一瞬不機嫌そうな顔を見せたが、いつも通りのキバナに戻っていた。
「それだけじゃないと言うと・・・?」
ヤローが話の続きを即足すと、キバナは画面からヤローとルリナに視線を戻した。
「はっきりと分かってねぇけど、ダンデはこいつと戦ってみたいらしい」
「それって・・・」
「推薦状はローズさんからだが、ダンデも出る様に手伝った・・・面白くねー話だぜ」
「その割にはキバナ君、やる気満々に見えるんじゃが・・・」
「そりゃそーだろ。ダンデが戦ってみたい相手だぜ?その前に俺さまが勝ったら、俺の方が強いってダンデに証明できる」
((うわぁ・・・))
平然と言って除けるキバナに、ヤローとルリナは引いた。
(拗らせてるんじゃ・・・)
(めんどくさい彼女って感じ・・・)
長年ダンデのライバルをしてきたキバナの思いは大きく、二人は理解しつつも、先ほど見た動画の女性に同情した。
「お前らもこいつに気を付けとけよ、特にヤロー。このハッサムのシザークロスは強烈だ」
「忠告ありがとうなんじゃ、キバナ君」
ヤローがキバナに礼を述べている様子を、ルリナはぼんやり見ていた。
そしてまだキバナの周りで浮いているスマホロトムに映る女性を見て、その姿を忘れない様に記憶していた。
そして今日、その動画の女性は今自分と戦っている。
自分の苦手な電気タイプを使い、渦潮を軽々と避け続けられ、次の最良の手を考え続けた。