第6章 ジム巡り
「逃さない!サシカマス、もう一度アクアジェットで先回りして渦潮!」
シビルドンの体制が整う前に、ルリナは指示を出し続けた。
「今度は前!次は左!」
もそれに負けず、シビルドンに指示を出し続け、渦潮に当たらない様にサシカマスの動きを見ていた。
(後ろからずっと攻撃をしているのに当たらない・・・っ!)
ルリナは内心焦っていた。
スピードでは勝てているはずなのに、自分の攻撃が当たらず、次の手はどうしようかと考えあぐねていた。
(サシカマスにアクアジェットで突っ込ませても、トサキントの二の舞にされてしまう。渦潮をなんとか当てたいけど、怖いのは後ろからの渦潮を確認しないこと。自分の背中はトレーナーに預ける信頼の強さ!キバナさん、なんでもっと注意してくれなかったのよ!!)
ここにはいないキバナに、ルリナは悪態をつきたくなった。
・・・
それは開会式の日だった。
いつも通りの式典が行われ、無事いいスタートが切れた日でもあった。
ジムリーダー控え室でほぼ全員が集まるのは年に数回しかなく、悪タイプのジムリーダーのみを除き、久しぶりの再会や情報交換に話を咲かせていた。
ちょうどルリナがヤローと話している最中に、キバナが話しかけてきた。
「よ、お二人さん。元気にしてたか?」
「キバナ君、お久しぶりです」
「調子良さそうね、キバナさん」
「まぁな。この時期が来るのをずっと待ってたんだ。今年こそ絶対ダンデを倒す!」
そう言ったキバナの目は本気だった。
普段は甘い顔を見せているキバナだが、ジム巡りが始まるこの時期になると、キバナのダンデに対するライバル心はますます増すばかりである。
その心意気に当てられ、自分も負けてられないとルリナもヤロー頷いて見せた。
「キバナ君を見ていると、こっちも燃えてくるんだな」
「ダンデばかり見て、足元救われても知らないわよ・・・メロンさんに」
「ぐっ・・・」
ルリナはキバナが苦戦しているメロンの名前を出すと、わかりやすく顔に出た。このガラル最強のジムリーダーと呼ばれるキバナも、相性の良くない氷タイプのジムリーダーのメロンには困っていた。
「それより、お前らに見て欲しいものがある」
キバナはわかりやすく話題を変えた。