第6章 ジム巡り
エレズンを見つめていると、エレズンもを見ていた。
こちらを伺う様な不安そうな潤んだ目が、また涙をこぼれそうに目に溜まった。
「・・・エレ?」
「そうよ、あなたがいいの。私これからいろんな町に行くから、楽しい旅になると思うんだ。一緒に強くなろう?」
はエレズンに手を差し出すと、エレズンは迷いなくその手を小さな両手で取った。そしてギュっと力を込めて、自分の顔に擦り付けた。
「エレレ!」
その様子に、二人はホッとした。
は両手でエレズンの体に手を差し込み持ち上げた。
「よろしくね、エレズン!」
ギュッと抱き込み、その愛らしい大きなおでこにキスを一つ落とした。
(私が愛情いっぱいあげるからね!そしてこの子を捨てたゲス野郎許すまじ)
エレズンの嬉しそうな笑顔を見たブリーダーの女性は、その様子を微笑ましく、しかし少し羨ましげに見つめ、そして数日だが一緒に過ごした時間が恋しく感じ始めた。
「エレズンをよろしくお願いします!」
それでもエレズンの幸せを願い、女性はに頭を深々と下げた。とエレズンは、女性の方を向くと、同じく頭を下げた。
「約束は守ります」
「エレ〜」
エレズンは自分に頭を下げている女性の頭に、手を乗せた。
女性は少し顔をあげ、エレズンを見ると、エレズンはどこで覚えたのか、女性の頭を撫でていた。
すると、止まったと思った女性の目からポロポロと涙が溢れ始め、嗚咽をこぼしながら言った。
「うっ・・・私の、マネ・・・っ・・・してる、の?」
「う〜う〜」
エレズンは首を傾げるだけだったが、女性はまた顔を下に向けた。
涙がいくつも地面に吸い込まれ、の目にもウルウルと涙が溜まり始めた。
「めっちゃいい子!天使すぎるううううっ!!!!」
ブワッと溢れ始めた涙は止まる事を知らず、と女性はしばらくその場で泣いた。