第2章 鮭大根よりも お相手:冨岡義勇
その日はたまたま仕事が早く片付いて
確か 義勇君も非番だって言ってたから
みくりは恋人である義勇に
鮭大根でも作ってあげようと
材料を買い揃えて
義勇の家へと向かった
あまり出かけたりするのを
好む彼じゃないから
きっと 非番なら家に居るはずだ
合鍵はもらってるので
どこかへ出ていたのなら
先に上がらせてもらって
準備しておけばいいし?
そう思って
玄関の前に立つと
カバンの中から
義勇の家の鍵を取り出して
差し込もうとした時
ガラガラと目の前の戸が開いて
中から出て来た 義勇と目が合ってしまった
「何だ?みくりか…」
「もしかして、義勇君出かける所だった?」
「ああ」
「そっか、だったら上がら
せてもらっていい?」
「別に、構わない」
相変わらず口下手なんだよなぁ 義勇君
もうちょっと 恋人なんだから
言い方とか ないのかな?
まぁ 期待してはいないけども
「お邪魔するね」
とみくりが玄関から中に入ると
出かけるはずだった義勇も
そのまま一緒に入って来て
「あれ?出かけるんじゃなかったの?」
「お前が、ここに居るなら…必要ない」
私がここに来たから
出かける必要が無くなったって事かな?
「もしかしてって、思って聞くんだけど…
義勇君が出かけようとしてた所って」
「蝶屋敷だが?…お前が居るかと思って。
だから、もういい。それより…」
「ん?何?どうしたの?」
「みくり、
お前は、ここに何をしに来た?」
だからさ 君さ
恋人なんだよ?仮にも?
来たら悪いのかって思うよね
普通ならさ
こんな言い方されたらさ
「何しに来たと思う?」
と意地悪をして聞き返してみたら
「…分からないから、聞いている」
「義勇君に、会いに来たんだけど。
ダメだった?」
「ダメじゃない…」
「そ、なら。良かった。
お夕飯用意するね?
義勇君、好きでしょ?」
とみくりに問いかけられて
「ああ、好きだ」
と義勇が返した