第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
その日から 変わった事があった
前まで15分だった
彼がここで過ごす時間が
20分になった
その延長した5分間は…
「熱が、出なかったんだったら。
この間の続き…するわ」
続きと言われて身構えてしまったが
サラサラと髪の毛を宇髄さんに
弄ばれてしまっていて
「おおっ、すげぇ。サラッサラじゃん」
「人の髪の毛で遊ばないで下さい、
宇髄さんだって、サラサラそうな
髪してるじゃないですか…」
ジッと睨む様に宇髄が
みくりの顔を捉えて来て
「地味な呼び方してんじゃねぇよ、みくり」
地味な呼び方
宇髄さん と呼ぶ呼び方の事だろうか?
「え?大魔法使いさんの方が
良かったって事ですか?」
「確かに、その呼び方は派手だ。
派手に派手で実にいいが、だが…
今はそうじゃねぇ。今…俺を呼ぶに
相応しい呼び方があるだろうがッ」
えっと 私は
何故か 呼び方でダメ出しをされていて
宇髄さんがダメなのなら
大魔法使いさんでないのなら
「お前、俺の名前。忘れちまってねぇよな?
俺の名前は、大魔法使い…宇髄…」
「…天天ッ!あっ、…えっと、
天元っ、天元だッ!あの、…天元…さん
でした…よね?そうですよね?」
「お前ッ、俺をパンダみたいに言いやがってっ」
「パンダ?パンダって何ですか?」
「あー、パンダなパンダつーのは
中国に居る、白黒の熊の事な。
日本には居ねぇよ」
宇髄の言葉にみくりの顔が
ぱぁっと明るくなる
「流石、大魔法使いさんは博識で
あられるのですね!」
「そ?もっと、俺の話聞きたい感じ?」
「はい!お聞きしたいです!!」
そう言って語り始めた
武勇伝にも似た様な宇髄天元様の
大活躍のお話はどこまでが本当で
どこからが嘘なのか良く分からない様な
そんな お話だった
毎日 来る度にピアノを1曲聞いて
嘘か本当か分からない様な話をして
それから 少しだけ…口付けをして
20分程 過ごす
そんな 毎日だった
その20分がどうにも楽しみで仕方ない
カレンダーの日付が11月から12月に移る頃
宇髄さんと出会って
ひと月が過ぎる頃には
少しばかり勝手が変わって来て居た
身体が重い…と感じる事が多くなって来た
少し動くだけで息が上がる
自分の病が進行してるのだと
自覚していた