第9章 酒に呑まれる夜 お相手:不死川実弥
「ねぇ、不死川君、大丈夫?」
みくりが隣に居た不死川に声を掛けた
鬼を倒したものの 隣にいる
不死川の腹には大きめの傷があるし
どこか落ち着ける所で
傷の縫合をした方が良さそうだ
「あん?こん位、
かすり傷だ。何ともねぇよ」
「そんな、深いかすり傷があって
いい訳ないでしょーが。生憎……この近くに
藤の花の家もないし、どこか旅籠にでも泊まる
しかなさそうね。お湯も頂きたいし、その傷も
さくっと縫っておきたいし……」
「お前なぁ、旅籠なんかより、旅館のが
いいだろーがよ!あんな所いたら、変な奴に
絡まれてもしんねぇぞ?」
確かに旅籠は 安い大衆宿だけども
まぁ 彼も柱なのだから
そんな所に
泊まりたくないのは そうだろうけども
「それは、私が飯盛り女と
間違えられるとかそんなの?」
「はぁ?お前みたいな、飯盛り女が
いっかよ?質の悪ィ冗談はよせやぁ」
飯盛り女……なぁ
旅籠の客相手にしてる娼婦みたいなもんだが
正直 飯盛り女は 遊女になれないような
醜女や学の無い女がする仕事だ
コイツみたいな 飯盛り女がいたら……
それこそ 旅籠が
大混乱になりそうなもんだが
「不死川君と一緒なら、
そんな所でも大丈夫かと思ったけど。
旅館探した方が、良さそうね」
「なかったら、連れ込み宿でもいいだろ?」
連れ込み宿と不死川の口から聞いて
前に彼と連れ込み宿で交わした
情交を思い出してしまった
「とりあえず、落ち着けて、
お湯が使えたらいいけど……」
「腹減ったから、俺ァ、飯食いてぇ…しよ」
「その恰好でご飯食べに行けないでしょ?
どこの世界に体から血を流しながら、ご飯
食べる人が居るのよ!ほら、そんな事
言ってる暇があったら、歩く!」
グイっと不死川の手首を掴んで
みくりが歩き出そうとした時に
「バーカ、ちげぇだろーがよ!こうだろーが」
手首を掴んでいた手を外されると
ギュッと手を握られてしまった
不死川と手を繋いで歩く形になって
なんだか ドキドキしてしまって
そわそわとして 落ち着かない
「みくり」
「な、何?」
「お前は、嫌なのかよ?俺とこうすんのはよ」