第34章 眠れぬ夜には…… お相手:煉獄杏寿郎 ※裏なし
その夜は… 雨の降る夜だった
どこか遠くの方で
微かに雷鳴が轟いているのが聞こえる
眠るのに邪魔になる程でもない位に
僅かに耳に届く様な
そんな音だったのだが
『きゃあああっ!』
雷鳴の音よりも大きな
悲鳴が炎屋敷に響いた
その声の主は…
間違いなく…俺の継子である
みくりの物だった
ドォオオオンとまた雷鳴が聞こえると
『きゃああぁあっ』
それと同時に悲鳴が響いた
ああ そうだった彼女は
雷が苦手…だったか
それにしても……だ
雷鳴だけならまだしも
屋敷の中で悲鳴を上げられてしまっては
眠れるものも眠れなくなりそうだ
ガラッと自分の部屋の襖を開くと
杏寿郎がみくりの部屋のある
離れへと移動する
とは言えども……
流石に同じ屋根の下で
男女が寝起きを共にするのは
良くないだろうと
夜間の接触はしないと言うルールを
彼女をこの屋敷で預かる事にした時に
こちら側から 提示していた手前
こっちから それを破る様で
些か 腑に落ちない部分はあるのだが…
「みくり?…大丈夫か?入るぞ」
ガラッと襖を開くと
部屋の隅に掛け布団を
頭からすっぽりと被って
震えているみくりの姿があった
鬼を目の前にしても
堂々たる風格すら示せるだけの
普段の勇ましい姿からは
大凡 想像も付かない様な姿ではあるが
「みくり。君は…雷が
止むまでそうしてるつもりか?」
「し、師範?どうして、こちらへ?
夜間は離れには、来ない約束では?」
ドォオンッ
またひとつ 雷が鳴ると
「きゃあああっ」
「雷が鳴る度に、君が悲鳴を上げるだろう?
気になりもする、…余程苦手なのだな。雷が」
「苦手なんじゃなくて、
嫌いなんですぅ!雷っ。嫌い!」
「眠れないのだが?」
そう告げると
目の前の彼女の顔が赤く染まって行って
「すっ、すいません!!
口押さえときますので。師範は
お休みくださいっ。騒がしく
してしまいまして、申し訳ありませんっ」
そう目の前の布団の山が
こちらに深々と頭を下げて来る