第30章 みじかいおはなし その2 ※裏なし お相手:色々
そっとみくりが自分の身体を捩じって
上半身を義勇の方へ向けると
その彼の顔に掛かっている前髪をかき上げる
「何か…、あったとかじゃないのなら。
私はそれでいいですけど……ね?
ため込む前に…、
呼んでといつも言ってるんだけど?」
「だが…、みくりも忙しい…だろう」
「でも、
しんどくなっちゃってからじゃ遅いから。
我慢しすぎない内の方が助かりますよ?
……で、何か……、
あったんじゃないですか?」
よしよしと義勇の頭を撫でてやる
「数日前の…任務…で、
蝶屋敷に運ばれた
植村…と言う隊士…の容態は?」
「守秘義務がございますので、
ご家族以外にはお答えしかねます……
と言いたい所ですけど。蝶屋敷は
病院ではありませんし。…それに
貴方が彼の負傷と関りがおありとあれば……
一概にお答えできませんとは
言い切れませんね。
彼の容態は安定しておりますし、
確かに重症ではありましたが。
回復に向かってます。彼が気掛かり…で
呼びたくても呼べなかった…と?」
3日前の任務で義勇君が
植村君と同行していて
彼の負傷を自分のせいだと
彼の性格上 自分の責めていて
そう思い込んでいるのなら…
こうして彼が私にひっついているのは
寒いからなんかじゃなくて
「みくり……、
もうしばらく…こうしててもいいか?」
そう遠慮しがちに尋ねられてしまって
「いいですよ。私は…義勇君の
様子を見に来ただけですから」
「いいのか?」
「ええ、いいですよ」
「だって、今日は寒いですから。
今日は義勇君に、お付き合い致しますよ」
だって 今日は
肌寒いから お互いの体温を
分け合うのも 悪くない
「みくり…その、
布団に…戻りたいんだが?」