第30章 みじかいおはなし その2 ※裏なし お相手:色々
この数日 急に冷え込んで来て
石油ストーブを倉庫から出して
使うようになったけど……
「あれ?付かない…ああ、
灯油……、切れだったのね」
灯油… 入れなくちゃ
灯油を入れるタンクを取り外し
みくりがそれを抱えて
勝手口から外へ出る
灯油をタンクに移そうと
している時にビュウと風が強く吹いて
ブルブルっと身体が震える
「寒っ…、それにまだ夜みたい」
まだ早朝で外は暗い
随分と夜が明ける時間も遅くなって来て
季節も今はまだ秋だけど
その内冬に移って行くのを感じる
「ううっ、寒いっ……、
早く灯油入れちゃわなくちゃ」
ちょっとの時間だからって
上着を羽織らなかったから
こんな冷え込んでるんだったら
ものぐさしないで 一枚
羽織って出てきたら良かったと
灯油をタンクに移し替えながらも
そんな事を考えていると
フワッと後ろから
何か白と赤い物が私を包み込んで
自分の背中に温かい
ぬくもりを感じた
「今朝…は、冷え込んでいるからな。
身体が冷えてしまうぞ?」
耳元で声が聞こえて
その声の主が自分の夫である
杏寿郎の物だと気が付いた
「杏寿郎さん!
今お戻りになられたのですね?
お帰りなさいませ」
「ああ。戻った。
ただいま。みくり。
それは良いのだが、こんな寒い中
上着も羽織らずに、
君は灯油を汲んでたのか?」
ん?この口調は……
もしかして
ちょっと怒って いらっしゃる?とか
「あ、その……、
短時間だったら大丈夫かなぁ~と」
彼の羽織りに包まれながら
更に腕を後ろから回されてギュッと
抱きしめられてしまう
「いいものか。
女性が……体を冷やすのは
良くないと言うからな。
……それに、みくり。君の身体は
君だけの身体じゃないんだぞ?」