第25章 みじかいおはなし ※裏なし お相手:色々
今日は待ちに待った
彼とのデートと言うか
逢引だったんだけども
こうして出会うのも
随分と久しぶりなような気もするし
鬼殺隊で柱なんてしてるのだ
おいそれとは会えないのは
私だって鬼殺隊の隊士なのだから
知ってはいるんだけども
元々寡黙な 彼なのだが
今日は一段と寡黙だ
「みくり。帰るぞ…」
「え?冨岡さん?
いや、でも…今来たばかりですよ?」
開口一番に帰ると言われるとは
こっちだって思って居なかった
「顔、…鏡見たのか?」
じっとその整った端正な顔が
私の顔を見て歪んでいるのが見えて
いや 貴方のお綺麗な
お顔と比べたらね?
私の顔なんて
その辺の雑草みたいなもんですよ
「おかしい…と、仰りたいのですか?」
「ああ、おかしい。
だから、帰ると言っている」
そう言って
珍しく彼にしては
言葉が続いたなと
みくりが内心考えていると
スッと影が降りてきて
そう思って居たら
ふわっと身体が浮き上がったと思ったら
彼に横抱きに抱きかかえられて
そのまま 速足で駆け出して
周囲の景色が流れて行く
ええ?そんなに?
町 歩くのも見苦しい位だったって事?
幾ら並みの顔だからって
そこまで?
「目の下に…クマがある。それに
顔色も悪い。仕事帰りだろう?」
言い逃れ…は出来そうにないなって
思って居たら 連れてこられたのは
所謂 連れ込み宿で
ここは所謂 ああいった事をする場所で
「少し休め。みくり」
「え、でもここ…」
「期待…してるのか?
だが安心しろ、休みに来ただけだ」
この 恋人は
女心が分かっているやら
いないのやら
部屋に入るなり
布団に横になる様に促されて
帯が邪魔にならないようにして
促されるままに布団に入ると
小さな子供を寝かしつける様にして
トントンと掛け布団の上から
一定のリズムで叩かれると
「あの、冨岡さん?
これ、寝かしつけられてませんか?」
「何だ、気付いたのか?
いいから、休め。…今すぐにだ
…で、起きたらまた、出掛けよう」