第25章 みじかいおはなし ※裏なし お相手:色々
「みくり。みくりは居るか?」
そう 私を呼ぶ声が聞こえて来て
「はい、何でしょう?師範。
お呼びになられましたか?」
「君に聞こうと思った事があってな」
「聞きたい事ですか?何でしょう?」
「何か、欲しい物はあるか?」
「欲しい物…?別に私は
誕生日でも、何でもありませんが?」
質問の意味が分からずに
私がそう返すと
ぽん と頭の上に大きな手が乗せられて
よしよしと私の頭を撫でた
「君は、いつも俺の継子として
任務も鍛錬も頑張っているからな。
その褒美だ。何がいい?
遠慮はいらんぞ?」
「うーん…、でも師範。お言葉では
ございますが。突然言われても
…思いつきませんが。
あえて…欲しい物を挙げるのなら…」
私のその返答を聞いて
腕組みをしたまま
何かに納得したようにうんうんと
師範が頷くと
「よし、分かった。決まりだな」
「え?何がですか?私は何も…」
「すぐに支度を整えなさい。出かけるぞ」
「え?は?…支度?出かけるって
…ええっ?今からですか?」
私が驚いているのが
心外だと言いたげに
師範が
私の顔を覗き込んで来て
その赤い目に
困惑した表情の私が映っていた
「聞こえなかったのか?
俺は出かけると言ったんだが?」
「いえっ、すぐに整えて参りますっ…
って。整えるのは
私だけですか?師範は?」
「ん?俺はこのままだが…、
君は着替えるといい。
と…言いたい所だが。
俺も着替えて来よう」
そう言って 足早に杏寿郎が
踵を返して戻って行ってしまって
ああ こうもぼんやりと
しては居られないと
みくりが支度を整えに
与えて貰っている私室へ戻って
師範をお待たせしては行けないと
慌てて支度を整ると
玄関にはすでに隊服から
着物に着替えた師範の姿があって
「すいません、師範。
お待たせしてしまって」
「何、気にする事はない。
女性の支度を待つのは、
男の特権だからな」