第23章 惣菜屋さんの筑前煮 後編 お相手:煉獄杏寿郎
彼の家を後にして玄関を出ると
スウーっと大きく
みくりが胸を押さえながら
深呼吸をした
正直な所
気難しい方と聞き及んで居たから
変に身構えてしまって
生きた…心地がしなかった…
空気を求めて何度も
深呼吸を繰り返す
「ふぅーーっ、
緊張…、してしまったわ」
でも…想像していた方とは
随分と印象が違っていた様な
それにあの口振り
私の両親を知っている様だった
もう少しと食い下がってでも
お話を聞いた方が 良かったのかしら?
そんな事をみくりが考えていると
ガラガラと閉まっていた
玄関が開いて杏寿郎が
少し慌てた様子で出てくる
「ああ。良かった。みくりさん
まだ、こちらにおられたか
…間に合った様だ」
「杏寿郎さん?」
「貴方を、お送りさせて
頂きたいのですが?
それを、俺に。
お許しして頂けますでしょうか?」
杏寿郎さんが送ってくれると
申し出てくれたので
お言葉に甘える事にした
「ええ。勿論。
お断りする理由がございませんし」
「良かった。では、参りましょう」
そう言われて
2人で並んで歩き始めた
隣を歩いている彼の顔を
そっと盗み見るも
やはりとても面差しが似ている
瓜二つと言ってもいい位だ
「驚かれ…ましたか?良く言われます故」
「ええ。とても良く似ておいでで…らして」
彼の父親との顔合わせは
想像して居た物とはかなり違っていて
拍子抜け…だったのだけども
大声で 怒鳴り散らされる
覚悟をして 望んだのに関わらず
その様な事には一切触れずに
父と母の事を聞かれただけだった
「今日は、申し訳ありませんでした、
みくりさん。わざわざお時間を
割いて頂いておりながら、
父上が聞きたい事だけを聞いて、
あの様な形で終わってしまい」
「でも。こちらといたしましても、
大声で猛反対されるよりは、
気も楽ではありましたが…」