第22章 惣菜屋さんの筑前煮 前編 お相手:煉獄杏寿郎
彼女と
みくりさんと恋仲になってから
二月が過ぎて…
夏から 季節は
秋へと移り変わっていた
俺はと言うと
鬼殺隊の仕事をしながら
実家とあっちの惣菜屋に
帰ると言う 二重生活の様な
そんな 生活をしていた
みくりさんには あれから
何度も家に入ってはくれないかと
そう話はしたが
自分の年齢を
かなり気にしている様子で
家に入るのは気が引けると…言われ
色よい返事は貰えてはおらず
そして父上には父上で
そんな女とは別れて
用意した見合い相手と見合いをしろと
一喝されてしまう始末
とは言えども
何とかして 父上とみくりさんを
引き合わせる事が出来たら…とは
考えてはいるが
良案が浮かばず
いたずらに 時間ばかりが過ぎていた
自分の家の玄関の前に立って
杏寿郎が
はぁーっと大きなため息を漏らした
駄目だな 俺らしくもない
ため息をついたりするなど…
スゥーっと大きく息を吸うと
家の玄関の戸に手を掛けた
「杏寿郎、ただいま戻りました!」
家の玄関をガラガラと勢いよく開くと
そう家の隅々まで響き渡りそうな
大声でそう杏寿郎が言った
その声が家の隅々まで 響いた頃に
パタパタとこちらへ向かって来る
足音が聞こえて来て
「あ。兄上。お帰りなさいませ!
お戻りになられたのですね、
お出迎えが遅れてしまい、
申し訳ありません。
兄上、お怪我はありませんでしたか?」
その手には
夕食の乗った膳を持ったままで
玄関が開いた音がしたので
こちらに
そのまま向かって来たであろう
自分の弟の 千寿郎の姿があって
「千寿郎。ただいま。
つい、今しがた戻った所だ。
それに、心配はいらない。俺は無傷だ。
問題はない。
今から…父上の所に行く所か?
それとも、その膳は
もう…下げて来た後だろうか?」