第75章 ふたり 一人独り 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
そのまま 眠っているフリをしてしまった
だから 俺が眠っていると
彼女は思ったんだろう…
「ごめんね…、杏寿郎…。
ごめんなさ…いッ、…話せ…なくて。
話して欲しいって、言ってくれてるのに。
私、何も…、言えない…の、怖…くて。
話さない私を、嫌いになられるより…。
話して、嫌いになられる方が怖…いの…ッ」
小さな声で 紡がれる言葉は
まるで 懺悔か何かの様にも聞こえる
俺に言ってるのに 独り言の様で居て
「杏寿郎と…、一緒に…居たい…」
聞かせるつもりのない言葉に
返事を返す事が出来なくて
眠っているフリをするしか出来ない
俺は君が 話したくないと
そこまで思ってるその話を
君じゃない第三者の口から
君にそれを隠して
訊こうとしているのだから
彼女が俺に悪い事をして居ると言う
罪悪感を感じて居るのと同じ様に
俺も それを頑なに知られまいと
している彼女に内緒で
それを知ろうとしている事実に
罪悪感を感じて居て
今の この言葉も
聞こえて居てるのに聞かないフリを
するのが こんなに辛いのかと
思わずに感じずに居られなくて
そのまま しばらくすると
隣から寝息が聞こえて来て
ギュと小さな子供の様に
俺の服を握りしめたままで
みくりは眠ってしまった様で
そっと その瞼に触れると
熱を持って腫れていたから
泣いて…たんだな…
その身体を自分の身体で
覆い隠す様にして包み込んで
ギュッと自分の腕の中に閉じ込める
「俺の傍に居て欲しい、
みくり、他の誰でもない君に。
俺は、君がいいんだ。俺のこの気持ちが
揺らぐ事は無い。と言えればいいんだがな。
俺が、そう言ってしまえば、君には
重荷にしかならないんだろう…な」
次に目を醒ましたら
日付が変わってしまっていて
ソファで寝ちゃってて
化粧も落としてないし
シャワーも歯磨きもして居ないと
ガバッとみくりが
身体を起して
ユサユサと杏寿郎の身体を揺すって来て
「…う…、ん?どうした?みくり」
「どうしたも、こうしたも無いよ!
杏寿郎。まだ、シャワーも洗面もしてないし、
寝るんだったら、ベッド行かないとッ。
このままソファで寝てたら。風邪引いちゃうし」
そう文句をいつもの口調で並べて来るのは
いつも通りの
俺の良く知っているみくりで