第17章 夏の空の落とし物 前編 お相手:竈門炭治郎
その青い 夏の空みたいな色をした
美空の瞳に 沢山涙が浮かんでいて
スッと俺の目の前に
差し出された彼女の小指に
炭治郎が自分の小指を絡めると
「約束…」
「ああ、約束……」
そう言って 指きりをする
「ごめん……、俺が美空を…」
ちゃんと 愛して
好きになって 抱いてあげられたのなら
どんなに 良かったんだろう
「ううん、いいの。
炭治郎、……おばさんと、お幸せにね?」
そう言って 嫌味ぽい
笑顔でニッと美空が笑うと
炭治郎の唇に自分の唇を重ねた
押し当てられるだけの
触れるだけの口付けが
終わって
ー 炭治郎 大好き ー
どこからか 声が聞こえた気がした
スウスウと寝息を立てている
俺の目の前にいる彼女からは
もう 美空の匂いがしなくなっていて
美空は 消えてしまったんだと
分かった
本当にこれで 良かったのだろうか
抱いていたとしても
後悔はあったのだろうけども
彼女は成仏したんだと
炭治郎には理解が出来た
今は嘘みたいに身体が軽くて
体調が悪かったのが
吹き飛んだだけでなくて
目の前に…寝息を立てて眠っている
ずっと会いたいと
そうしたいと思って居た相手が
無防備な姿を晒している訳で
口付けるくらいなら……いいかな?と
邪な発想が浮かんで来て
こんな時になんて事を
俺は考えているんだぁああああっ
ブンブンと頭を左右に大きく振って
その考えを逃がす
穏やかな寝息を立てて
眠っている
そのみくりの顔を眺めていると
瞼 腫れちゃってるな…みくりさん
それもそうだよな
あんなに美空の状態で泣いてたから
それも当然か…