第69章 なつのおはなし ※裏なし掌編 お相手:色々
「しかしっ…、私の身体には…何処にも
触れられて、嬲られた事の無い場所なんて、
この…ッ、中にすら…、無い…のにッ…」
そう言ってギュッと
みくりが自分の胸の前で拳を作って
その心の中の隅々まで蹂躙されて居ると
そう訴えかけて来るが
聞こえがいいはずの
俺の耳には全く入って来ないで居て
そのみくりの目から零れる涙が
綺麗だなとか そんな事を考えていた
「んな事、気にしてたの?お前」
その 数年に渡って 刻み付けられた
消えようもないような 穢れを
そんな事 で済まされてしまって
どんな言葉を返せば良いのかと
言葉を忘れたかの様に何も言えないで居て
「お前の身体に、触れられた事のねぇ
場所がねぇんだったら、俺がそこを
全部、触れて可愛がればいいだけじゃん?
その奥の奥まで、…俺の物になっちまえよ」
「私の、話っ…
聞いて…おられなかったのですか?」
ほじほじと宇髄が自分の耳をほじると
「いーや、聞いてたよ?聞いてたから
そ、言ってんの。
まだ、分かんねぇフリしてぇの?みくり。
ま、お前が俺の嫁にちゃんとなるには、
時間が掛かってもいいとは
俺も、思ってたけどさぁ?
怯えてんじゃねぇよ、遠慮もしてんな、な?」
そんな事が穢れた自分に許されていいのかと
目の前の彼の与えてくれる愛に
自分を全て委ねてしまっていいのかと
どうしたらいいのかと答えに迷う
それでもいいと許される
それでもいいと愛される
「なぁ、みくり。
そろそろ天元様の嫁に、
ちゃんとなるつもり、なってくれた?」
ギュッと彼の胸元の隊服を掴んで
その宇髄からの問いかけに
みくりがこくりと頷いた
ずっと 拒み続けて来た温もりが
そっと壊れ物に触れるかの様にして
みくりの唇に触れて来て
ほのかな 檸檬の香りのする
その口付けは
微かに ひんやりとした冷気を帯びていて
口付けを繰り返す内に薄れていく檸檬の香りの
その奥から 彼を感じる頃には
冷たい口付けは
夏の気温よりも熱い口付けに変わって居た
冷たい口付け
ー 終 ー
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何でこの主、こんなに隠れるんだろ?って
理由つけてたら、重くなってました💦