第69章 なつのおはなし ※裏なし掌編 お相手:色々
いや だってあれは
セクハラまがいだったし…?
俺も黙って見てられなかったって言うか
「いつも、私の事を気に掛けて
親切にして下さいます…」
その恋人の話を
嬉しそうに続けるみくりを見て
「あー、何か、心が折れそうだから
俺、もう、帰るわ」
「その彼氏と、お幸せに」
「じゃあ、さっきの忘れて貰っていい?
俺達、帰るし?ご馳走様」
惚気にとられていた様で
そう言われてしまって
ぽつんとその場に
みくりだけが残される
「村田さんに…、会いたいな」
そうぽつりとみくりが呟くと
「呼んだ?俺の事」
後ろから声が聞こえて来て
会いたいと思って居たその人の
声が後ろからして
驚いたままの口も塞がらずに
その会いたかった人の
照れくさそうな顔を見ていると
「むっ、村田さん?今日は、どこか
お怪我でもなさったのですか?」
「いいや、俺はこの通り、
運のいい事に、今回も無傷だよ。
みくり…さ、今夜
俺と出掛けたりとか…して欲しいんだけど」
「え?夜に…ですか?」
夜のデートに誘われて
驚いた様子で返して来て
「その、浴衣で、今日の夏祭りに
俺と、一緒に行かないかな?…って
ああ、やっぱり、忙しいよね?色々と」
「行きますッ!お祭り
浴衣で行きますから!村田さんと
お祭りなんて、嬉しいです」
そう言ってニコニコと
嬉しそうな笑顔をみくりが浮かべていて
「ええっ?いいの?
祭りに一緒に行く相手、こんな俺でも」
そう不安そうに
こちらに必死になって
こっちに聞いて来るから
その村田の姿を見ると
ふふふっと思わず
声が漏れる程に笑ってしまっていて
「いいもなにも、村田さんがいいです
村田さんと、行きたいんですもの、私」
こんな俺でもいいですか?
って俺が聞いたら
村田さんが良いんですと
そう彼女が答えてくれて
夏の太陽よりも眩しい
そんな笑顔を俺にくれた
こんな俺でもいいですか?
ー 終 ー