第69章 なつのおはなし ※裏なし掌編 お相手:色々
その日は 朝から
うだるような暑さで
まだ早朝だと言うのに
ギラギラとした太陽が照り付けていた
そんな中に
一人の来訪者が現れた
自分の恋人である
水柱の冨岡義勇だ
「義勇君?どうしたの?
こんなに早い時間から。
あっ、もしかして任務の帰り?
怪我でもしたとか?」
そうこちらが義勇に問いかけるものの
義勇からの返事はない
「みくり」
そう静かに名前を呼ばれて
彼の顔を見上げる
「…うん?」
「何も言わずに、怒らないで聞いて欲しい」
「聞くのは…その、別に、いいけど、
聞いて怒る様な、内容なの?義勇君」
「…今から、ここに誰が来ても
俺は居ないと言って欲しい」
そう義勇がこちらに言い出して来て
その返事を待たずにスタスタと
ある方向へ向かって歩いて行く
ってそっちそっちは
私の私室…ッ
「ちょ、っと、待ってっ。
義勇君は?義勇君はどこ行く気?」
「どこ…?お前の部屋だが」
何か問題でもあるのかと言いたげに
義勇がその端正な顔を歪ませた
ちょっと待ってまだ
それを引き受けるとも言ってないし
どうして君は私の私室へ向かってるのかとか
聞きたい事は山ほどあるのに
そこにさっきまであった義勇の姿は無く
その代わりに玄関の方が騒がしい
「ああ。小野寺少女か!
こちらに冨岡が居るかと思ってな。
邪魔をさせて貰って居るぞ?」
そう声を掛けて来たのは
炎柱の煉獄杏寿郎だが
「あの、炎柱?私は少女ではないと
何度もご説明を申し上げたと思うのですが?」
「むっ、そうだったのか?君は
あの神崎少女や栗花落少女とそう
変わらないんじゃないのか?」
「私は、貴方がお探しの冨岡義勇と
同じ年齢にありますので。貴方様より
ひとつ年上にあります。それに
このお話を致しましたのも、5度目にありますが?」
毎度毎度 蝶屋敷に来る度に
大凡少女の枠にない私を
大声で少女呼びするので
その度に訂正しているのだが全く直らない
「よもや!そうだったか。
それは女性に失礼を…っと、
いやそうでもあるまい、女性は
自分の年齢を若く見られると喜ぶと言うが?」
コホンと杏寿郎がひとつ咳払いをすると
「それでは、改めて。小野寺女史。
こちらに冨岡はお邪魔してないだろうか?」
「あら、そんな私など大層な存在では…」