第17章 夏の空の落とし物 前編 お相手:竈門炭治郎
丁度 私が仕事を終えたタイミングで
炭治郎君の鎹鴉が
私宛の手紙を持ってきてくれた
お互いの任務ですれ違う事も多く
手紙のやり取りはずっとしては居たけども
やっぱり 手紙だけじゃなくって
「会いたいなぁ……、炭治郎君に」
炭治郎からの手紙を
自分の胸に押し当てながら
はぁっとみくりはため息をついた
最後に会ったのは……
梅雨になる前だったから
知らない間に梅雨も明けて
本格的な夏が来ていた
暑さ寒さはしのげる隊服ではあるが
顔は出てるから 暑いんだよなぁ
何でも 炭治郎君が
仕事で立ち寄った場所の
夏祭りが今日あるから
もし 来れそうなら一緒に
夏祭りに行きませんか?と言う
手紙だったんだけども
やっぱり夏祭りなんだから
浴衣だよね?
そう思い立ったみくりは
一度自分の家に浴衣を取りに戻って
流石に浴衣では早駆け出来ないから
どこかで着替えるとして
浴衣の一式を風呂敷に包むと
自分の家を後にした
こういう時に
自分の呼吸が雷で良かったって思う
多少自分が居た場所から
距離はあったが
約束した時間には間に合いそうだ
近くにあったお蕎麦屋さんで
事情を説明して
二階の空いている部屋を
分割りで使わせてもらって
浴衣に着替える
この町は 都心からは
離れているけども
それなりに人口の多い大きな町で
私も任務の時に
立ち寄ったりした事が何度かあった
町の中心となるのが
今日の祭りの舞台である
八幡神社 はちまんさんで知られる
全国的にお社のある神社は
この町の中心となる場所に
森とも呼べるくらいの木々に囲まれた
規模の大きな神社で
祭りの準備もすでに着々と
整っており
まだ日が落ち切っていなかったが
参道から本殿へと並んでいる提灯には
明かりが灯されていて
参道に並ぶ屋台からは
いい香りがして来ていた
綿菓子やりんご飴を持った
小さな子供ともすれ違って
普段はそう人気も多くない
この辺りも祭りともなると
こうもに賑やかなのだなと
みくりは考えていた