第16章 夢 現 お相手:冨岡義勇
仕事が終わったらすぐに戻ると告げて
水屋敷を出たが…
思っていた以上に
手間取ってしまったな
義勇が空を見上げると
月の位置から計算するに
時刻は
日付けを跨いでしまったようだった
今夜はみくりも仕事を終えて
水屋敷に戻って来ていて
久しぶりにふたりでゆっくり出来るねと
喜んでいたのに……
急に任務が入ってしまった事を
俺が告げた時のあの表情を思い返して
俺は 急いで
任務を済ませて戻るつもりで居たのだが
鬼の動きが思っていたよりも
素早く 翻弄させられてしまった
「もう……、随分と夜が更けてしまったな」
日輪刀の血を振り払うと
刀を鞘へ納めた
水屋敷へ義勇が戻る頃には
時刻は丑三つ時になろうとしていた
流石にこの時間なのだ
屋敷の玄関こそ俺が戻る為に
明かりを灯してはくれているが
屋敷の中は暗かった
眠ってしまっているか……
仕事の帰りで疲れがない訳ではないが
せめて自分が休む前に
みくりの寝顔でも眺めようかと思い
義勇は刀掛台に日輪刀を置くと
みくりの寝室へと向かった
そっと起こさない様に襖を開くと
中から規則正しい寝息が聞こえて来る
よく眠っているようだ…な
音を立てない様に
眠るみくりに近づくと
その眠っている顔を覗き込んだ
「みくり、今、戻った。
すまなかった…な」
話したい事があると言っていたし
俺としたい話でもあったのだろう
とは言っても 俺は話すのが苦手だから
その分みくりが一人で俺に話をしてくれる
そして 俺は……
そんな風に みくりが俺に
一生懸命に話をしてくれるのを
聞く時間が… 好きで
たまらなく 愛おしいと感じてしまう
俺に 話しかけてくれる
みくりの 声が
俺に 笑いかけてくれる
みくりの 笑顔が
俺の心を温かく包んで 満たしてくれて
守りたいと……思っている
ずっと 共にありたいと
「みくり……俺は、っ…
何を言うつもりだったんだ。俺は……」
眠っている彼女にそれを告げても
仕方のない事なのに…
それにしても 良く眠っているな