第58章 今年の彼の誕生日は…後編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
杏寿郎が手を導いた先には
彼がここで確かに 今
存在して居て 生きているんだって
証拠があって
そのまま その左胸の位置から
みくりが右手を胸板に這わせて
みぞおちの辺りにある 痣の辺りに触れる
杏寿郎のみぞおちにあるこの痣を
見るのがとても嫌だった
恐ろしい位の 不安と悲しみに
自分の胸が押し潰されそうになる時が
時々あったから…
でも 不思議な気分だ
「みくり?」
杏寿郎の身体に残って居る
バスローブを肩から落として
そのみぞおちの痣をなぞる
違和感を杏寿郎も感じていた
ここに触れて来る時のみくりは
いつも思いつめた様な顔をしていたからだ
その表情を見てるこちらが
見てるだけで辛くなる程に
だが… 今は 違っていた
今 そこに触れているのは
あっちの彼女じゃなくて
俺の奥さんの方の彼女だと
「平気…なのか?みくり」
「うん、平気…みたい。
自分でも良く分からないけど。
もう、この痣を見ても…大丈夫そう」
「この痣は生まれついての物だったし、
生まれて小さい頃には、背中側にも
同じ様な痣があったと、母が言っていたが」
杏寿郎がその痣の所在を確かめる様にして
自分の手をみぞおちに重ねる
「君に会った頃位から、少しずつ…
年々、薄く…なって来てる。みくり」
杏寿郎の手がみくりの頬と頭を撫でる
もう何度も身体を重ねて来て
もう数えきれない位 キスだって交わしてるのに
今日だって 何度もそうしたのに
まるで 初めてキスをするみたいだって
そんな事を 近付いて来る杏寿郎の顔を見ながら
ぼんやりと考えていて
じっとこっちを見ているその目が
伏し目がちになって行くのが見えて
みくりは瞼を閉じた…
そっと 唇に触れるだけのキスをされて
ちゅ…ちゅ…と 触れるだけのキスを
お互いの唇を合わせて繰り返す
スルッと杏寿郎の頬に
みくりが手を伸ばして来て
杏寿郎の額を自分の額に付けさせる
額を合わせたままで見つめ合うと
ふっと 杏寿郎が笑い出して
それにつられる様にして
ふふっ とみくりも笑った
「これからも、
よろしくお願いいたします。旦那さん。」
「俺からも、改めて
よろしく頼むぞ?俺の奥さん」