第49章 3度目のホワイトデーは 後編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
板張りになったベランダに
小さな洗い場と露天風呂があって
陶器で出来た楕円形の浴槽には
源泉がかけ流しなのか
その浴槽の縁からは
湯気を上げたお湯が零れている
「日が暮れてしまえば…、
海しかないから外は真っ暗だろう?
まだ、明るい時間なら海も見えるからな
それに今なら…丁度、ここから
眺められるだろう。一緒に」
そうか 時間…丁度18時ぐらいだ
日の入りの時間…
「って、もしかして全部
杏寿郎の計算通りだった?
お夕飯の時間とか…その…色々と」
洗い場で身体を洗いながら
みくりが杏寿郎にそう尋ねて
「いや、それはたまたまだがな」
先に洗い終えて
湯船に浸かっていた杏寿郎が
おいでとみくりの方へと手の伸ばして来て
その手に自分の手を重ねると
そのまま浴槽の中に引き入れられる
みくりが両手で湯船の中の
温泉をすくって それをまた戻すと
「杏寿郎…。凄い…贅沢だね。
ここから見える海も、あの夕日も
この温泉も、2人だけだもん」
「ああ、そうだな。一緒に
温泉に浸かって海に沈んで行く
夕陽を眺めるなんて贅沢は
そうそうには出来ないだろうからな。
今日は…、来て良かった…と
感じて貰えただろうか?みくり」
みくりが自分の背中を
杏寿郎の胸に預けると
そのまま下から杏寿郎の顔を見上げて来て
「うん、勿論…だよ、杏寿郎…。
来て良かった…よ?」
「そうか、君に喜んで貰えたのなら。
俺は、何よりだ。それに、俺も
今日は…、満足してるからな」
杏寿郎の言葉にみくりが
きょとんと目を丸くさせて
「ちゃんとした、
旅行に来れたからって事?」
「勿論、それもあるにはあるが。
旅行先だけあって、今日の君は
いつもよりも、大胆だし素直だからな。
俺としては…、普段からもっと、
今日ぐらい…俺に素直になってくれても
いいんじゃないかと思うがな」
バシャンッとみくりが
杏寿郎の顔にお湯を掛けて来て
「いっ、言わないでッ、忘れて。
さっき私が言った事とかは、
記憶から抹消してくれていいからっ!」
「それは、どうしてだ?みくり。
君は恥ずかしがり屋さんなんだな…。
俺としては、もっと、聞きたいが?
俺を君がどう思ってるのか…、
君の口から…聞きたいんだがな」
「…なっ!…ぅ゛っ、それは」